湧水全量戻しで流量維持 国交省会議が中間報告案【大井川とリニア】

 リニア中央新幹線工事に伴う大井川の流量減少問題を巡り、国土交通省の専門家会議(座長・福岡捷二中央大教授)は26日、都内で開いた第12回会合で水利用への影響に関する中間報告案を議論した。工事期間中を含めてトンネル湧水を全量戻せば、中下流域の流量は維持できるとする大筋の方向性で一致した。JR東海が影響がないと主張する根拠の水収支解析(流量予測)は「確定的でない」とし、同社に減水の可能性を認識させる重要性も中間報告案に盛り込んだ。
 新型コロナウイルス感染拡大などの影響で止まっていた会議は約5カ月ぶりに再開し、福岡座長は次回会合で中間報告をまとめると表明した。
 ただ、中心的な議題としてきた「トンネル湧水の全量を大井川に戻す方法」は、同日時点の報告案には具体的に明記していない。
 トンネル湧水が県外流出する工事期間中に関しては、報告案はJRの流量予測の通りになれば中下流域の表流水の量は維持されるとした。これに対し、沖大幹委員(東京大教授)は「想像できないリスクがあり、分かっているリスクだけで議論しても安心しないのではないか」と会合で指摘。徳永朋祥委員(同)は「(科学的な情報を)地域の人と共有し、きちんと話をしてほしい」とJRに求めた。このほかの委員からも同社は地元の理解を得られるようにすべきとの意見が相次いだ。

■JR副社長 県外流出分は「工事後」
 JR東海の宇野護副社長は26日の国土交通省専門家会議終了後の記者会見で、金子慎社長が2018年10月に表明した「トンネル湧水の全量戻し」に関して「極端に言うと工事後の話をしていた」と述べ、工事期間中を含まないとの認識を示した。
 工事期間中はトンネル湧水が県外に流出するため、県や利水者は工事の影響回避策として全量戻しを求めている。会議に同席した難波喬司副知事は「JRは当時、工事中や工事後の区別なく説明している。説明を崩されると対話が成り立たない」と不快感を示した。

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