介護で笑顔に 元芸人の河合さん奮闘 「食」担当妻と施設経営

 お笑い芸人から介護の世界へ-。浜松市浜北区のデイサービス「和彩花(わいか)」を経営する河合昇さん(37)は、東京での芸人生活に踏ん切りをつけ、4年前から地元で介護施設を始めた。妻悠起子さん(42)の作る地産食材にこだわった食事も評判となり、近くテークアウトも始める。夫婦二人三脚、新たな“笑い”を生み出す仕事に生きがいを感じている。

妻悠起子さん(中央右)手製の料理と食材について説明する河合昇さん(中央左)=9日、浜松市浜北区のデイサービス和彩花
妻悠起子さん(中央右)手製の料理と食材について説明する河合昇さん(中央左)=9日、浜松市浜北区のデイサービス和彩花

 昼食前の時間。モニターの前に立ち、その日のメニューと食材を漫談風に説明する河合さん。とぼけた口調で繰り出される“ぼけ”に利用者から突っ込みが入る。自然と笑いの輪が広がっていく。施設の日常の光景だ。
 河合さんは大学卒業後、高校時代からの夢だったお笑い芸人を目指し上京。タレント養成所「吉本総合芸能学院(NSC)」に入学した。卒業後は吉本興業に所属し、芸人としてデビューした。
 ただ、現実は厳しかった。
 仕事はほとんどなく、年収は3万円ほど。テレビに出始めた同期の芸人も増えてきた。「自分には才能がないのか」-。葛藤を抱えながら、夜間のアルバイトで食いつなぐ日々が続いた。
 転機は介護施設で始めた夜勤だった。見回りで利用者と会話をする度、たわいのない自分の話に笑ってくれた。「舞台では全くうけない僕の話に笑ってくれる人がいる」。介護現場は上京して初めて自分の存在が認められた場所だった。
 5年で芸人を廃業。第二の人生は介護の道を歩もうと決めた。都内の介護事業所に入社し、1年で施設長を任された。ほどなく入社した悠起子さんと働く中で、互いの介護観に共感。公私ともに関係を深めていった。
 結婚を機に独立。施設運営で一番にこだわったのは食だ。飲食業の経験もある悠起子さんは「前職の介護食は湯煎や冷凍ものばかりだった。食事から介護の在り方を変えたかった」と語る。その思いから、日々地元の生産者を訪ねて「原価率100%」の手作り料理を提供。利用者以外にも地産の食を広めたいと、10月から弁当としても販売する。
 「お笑いの世界で笑いを生み出すことはできなかった。でも、今はこの仕事で笑顔が見られる」。河合さんは、今日も介護の“舞台”に立っている。

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