静岡県内基準地価の概要 回復途上、残る不透明感

 21日発表の静岡県内基準地価は住宅、商業、工業地の全用途で下落が続いたものの、前年に比べて下落幅は縮小し、新型コロナウイルス感染拡大による影響から回復基調にあることをうかがわせた。ただ、住宅地は利便性の高いエリアで地価が上昇に転じた地点が増加した半面、商業地は中心市街地などで回復のスピードはやや遅く、先行きに不透明感が残る。各地の動向や売買例を地元不動産関係者に取材した。

23年連続で県内最高価格となった商業地の地点付近=静岡市葵区呉服町
23年連続で県内最高価格となった商業地の地点付近=静岡市葵区呉服町
浜松市中区鍛冶町の同市商業地最高価格地点付近
浜松市中区鍛冶町の同市商業地最高価格地点付近
沼津市の商業地最高価格地点付近=同市大手町
沼津市の商業地最高価格地点付近=同市大手町
23年連続で県内最高価格となった商業地の地点付近=静岡市葵区呉服町
浜松市中区鍛冶町の同市商業地最高価格地点付近
沼津市の商業地最高価格地点付近=同市大手町


■中部

 静岡市 
 【葵区、駿河区】葵区の住宅地は0・3%上がり、昨年のマイナス0・8%から2年ぶりに上昇に転じた。駅近エリアや北安東、大岩などは21万円強で引き合いが戻ってきた。西草深町で40万円を超える取引もあった。
 駿河区は0・4%下がったが、下落幅は縮小して新型コロナウイルス発生前の水準に回復しつつある。八幡や石田などは20万円前後から。中田周辺の中古マンションは築10年程度でも新築と変わらない価格で売買される。
 商業地は葵区が0・0%で横ばい、駿河区は0・1%下がった。中心市街地の空き店舗の動向が注目される。
 【清水区】住宅地は1・9%下落。新型コロナウイルス感染拡大が続く中、資産整理の一環で土地を手放す動きが出ている。そうした中、比較的広めの宅地の需要が増えた。取引例は岡町約10万円、谷田約22万円など。商業地は1・1%下がった。沿岸部に近いJR清水駅周辺は下落が特に顕著。上原で約13万円など。

 焼津市 
 住宅地は1・9%、商業地は2・1%の下落。住宅地は津波リスクの影響で、沿岸部の引き合いは鈍いが、JR焼津駅からやや離れた地域では人気が高い。JR西焼津駅周辺では8万円台。小土や小川は学校、スーパーが立地し、交通の利便性から引き合いが強く、6万~9万円台の取引。商業地は動きが低調となっている。

 藤枝市 
 住宅地は0・6%、商業地は1・3%の下落。JR藤枝駅周辺は依然人気が高いが、空き物件がほとんどない状況。住宅地は駅からやや離れた志太で7万円台の取引があった。郊外では、子育て世代が広めの土地を求める動きがある。天王町で5万円台、大東町や岡部町岡部で4万円台、大西町や仮宿では3万円前後で成立した。

 島田市 
 住宅地は1・6%、商業地は3・0%の下落で、下げ幅はいずれも前年より縮小した。「下げ止まり感はあるが、取引は依然低調」という。住宅地は、JR島田、六合の各駅からやや離れた閑静な地域の需要が継続していて、細島で6万5千円、旗指で5万7千円の取引があった。商業地は売買の動きが少なく、依然厳しい状況。

 牧之原市 榛原郡 
 住宅地は牧之原市が2・2%、吉田町が1・1%、川根本町が2・9%、いずれも下落した。交通の便が良く商業施設が進出している内陸部では引き合いがあるが、沿岸部を中心に空き家が増えている。同市波津で3万円前後の取引。商業地は牧之原市が3・2%、吉田町が3・8%、川根本町が1・1%それぞれ下落した。

■西部

 浜松市 
 【中・東・西・南区】商業地の平均変動率は、中区がマイナス0・8%、西区が同1・9%だった。JR浜松駅周辺の中心市街地の需要はコロナ禍で全般に低調。飲食配達などの業種から店舗の引き合いがある。東区は0・8%上昇。国道152号など主要道路沿いの需要は根強いが物件が少ない。住宅地は中区が0・1%上昇でほぼ横ばい。東、西、南各区の下落率は縮小した。人気エリアは依然強含みで、西区大平台は12万円程度。分譲地が整備される中区高丘西は10万円前後。南区は北側エリアで動きが出始め、三島町や本郷町で7万5千~10万円。

 【北区】住宅地は1・6%、商業地は2・0%の下落。市街地へのアクセスが良く、地盤が強固な三方原地区は商業地で6万円台の取引があったものの、土地物件数は年々減少している。細江町では商業地で5万円台の売買実例がある。ただ、旧引佐郡は三ケ日町で1万円台のところもあるなど、全体的に低調な取引が続く。

 【浜北区】住宅地は0・6%下落。遠州鉄道駅や大型商業施設などが近い地区に人気が集中している。小松は5万~6万円台で売買され、貴布祢は10万円の取引が成立した。小学校が近い中瀬、西美薗の両地区も6万円台後半から7万円台で引き合いがある。周辺部の根堅、宮口は4万円台でも人気が低い。商業地や工業地の商いは乏しい。

 【天竜区】住宅地は3・4%、商業地は2・2%といずれも下落した。最も引き合いのある区画整理地区の船明は2万円前後の地価が人気の要因。子育て世代に加え、北遠からの高齢の移住者が増えている。西鹿島駅周辺は5万~6万円台で安定しているが、宅地が限られるため取引は少ない。商業地は、まとまった土地がなく引き合いは乏しい。

 湖西市 
 住宅地は1・7%の下落。大手製造企業が複数立地するJR新所原駅周辺は依然人気がある。駅から徒歩圏内の梅田で9万円台の売買があった。沿岸部の新居町新居では4・9%の下落。物件は残っていて、1万円台の取引が盛ん。安価に取得した後、借家や建売住宅のための活用が目立つという。

 掛川市 
 住宅地は1・3%下落したが、前年より下げ幅は縮小した。JR掛川駅から徒歩圏内の中央小と第一小の学区の引き合いが強く、中央と亀の甲でいずれも7万円台半ばの取引があった。久保は6万円台後半。大規模な宅地開発があった下垂木は需要が一服した。商業地は1・7%の下落。駅北では飲食店の撤退が散見されている。

 菊川市 御前崎市
 新規出店など変動要因は少なく、売買は低調。菊川市の住宅地は0・9%下げた。JR菊川駅北側の柳、潮海寺で5万~6万円台と、中心部で一定の需要がある。加茂でも宅地造成が行われている。御前崎市の住宅地は1・7%の下落で、調査4地点の平均価格は県内市町で2番目に低かった。中心部の池新田で3万円台の取引があった。

 磐田市 
 住宅地は0・7%、商業地は1・7%それぞれ下落した。JR磐田駅北側の中泉、国府台は引き合いが強く、公共施設に近い中心部で7万円台半ばの取引。東名インター南側で商業店舗が集積する見付地区北部、高台の富士見町も堅調な売買が続く。今後の街並み形成が注目される御厨駅周辺は、需要の一方で物件供給は限定的。

 袋井市 森町 
 袋井市は住宅地が1%の下落。JR袋井駅徒歩圏の方丈や睦町は人気が高い一方、沿岸部の湊は4%、北部の川会は1%下落。市街地と郊外の価格差は拡大傾向。栄町で5万7千円台の取引があった。森町の住宅地は1・5%下落。利便性の高い中心部は人気が根強い。南町で3万9千円台、栄町で2万8千円台の売買実例。

■東部

 沼津市 
 住宅地で米山町と神田町が前年からわずかながら上昇した。小林台など横ばい地点も散見。総じてJR沼津駅北口は底堅い。高島町は15万円前後、米山町は12万円前後など。
 地元不動産業者は「あまり大きな動きはない。売り出されている土地自体が少ない」と活況を呈しているわけではないとみる。特に引き合いが出ているエリアも見当たらないという。「上昇する要素が乏しい。瞬間風速的な現象では」とも。
 沼津駅南口は価格が安い分、値頃感から若干の動きがある。商業地は大手町など厳しい商い。

 富士市 
 住宅地は1・1%下落した。売れ行きは鈍化しているが分譲地の人気は引き続き高い。取引の盛んな市南部の森島、宮島では6万円台、市北部の一色では5~6万円台で推移。富士中央小校区の青葉町は13万円台の実売例もある。商業地の動きは少ない。工業地は0・4%上昇。枯渇する大規模用地の需要が高く、物件待ち状態。

 富士宮市
 住宅地は1・4%、商業地は1・1%下落した。農地転換による宅地造成が多く、住宅地は全体的に供給過多の傾向。万野原新田は利便性のある南側地域で引き合いがある。中規模分譲地で5万円台の取引があった。商業地は住宅地の価格に近づきつつあり、下げ止まり感もある。横ばいとなった工業地は流通業務用地などで需要は底堅い。

 三島市 
 平均価格は住宅地、商業地ともにわずかな変動。交通利便性の高いエリアは上昇傾向が続き、大宮町で17万5千円の売買事例があった。緑町でも約18万円と強気の価格で取引が成立している。三島駅の北口周辺は需要が高いものの物件が少ない。中心市街地を中心に「高値、上昇傾向はしばらく続く」とみられる。

 裾野市 
 住宅地、商業地とも0・8%の下落。コロナ禍の影響による住宅購入の低予算化傾向が続き、全体的に価格を押し下げた。
 JR長泉なめり駅に近く、生活環境が整った伊豆島田は供給が少ない分、価格は堅調で13万円台の取引があった。市中心部の佐野では11万~12万円台。市街地を離れると、取引は低調。

 長泉町 清水町 
 長泉町の住宅地はJR三島駅やJR長泉なめり駅付近では高水準を維持。下土狩は15万~16万円台で人気がある。清水町の住宅地は0・3%下落。昨年より下げ幅は狭まった。サントムーン柿田川周辺の需要は高く、新宿で15万円以上での取引が見られた。両町とも引き合いはあるが、供給は少ない状況が続いている。

 御殿場市 小山町 
 住宅地は御殿場市が0・2%下落した。需要に対して供給が少なく、高値で売り出されても買い手が付く。御殿場小校区で10万5千円前後、御殿場南小校区で11万5千円前後の取引があった。小山町は0・8%の下落。北郷地区で5万円前後の売買があった。商業地は御殿場市が0・7%、小山町が1・0%下がった。

 伊豆市 伊豆の国市 函南町 
 住宅地は伊豆市が3・1%、伊豆の国市は1・7%、函南町は0・8%それぞれ下落した。函南町や伊豆箱根鉄道沿線は通勤の利便性から価格は安定。韮山駅徒歩圏内の伊豆の国市四日町で11万円台の取引がある。伊豆市牧之郷は一戸建て住宅の新築が目立つ。3市町の全調査地点で下落した商業地は「冷え切っている」という。

 熱海市 
 商業地は3・7%上昇と県内最高の伸び率。新型コロナ下でも、飲食店などの進出需要が高い状況が続く。田原本町や銀座町といった中心街に供給できる土地はほぼなく、周辺の咲見町で20万円台の取引があった。住宅地は1・4%下落したものの、7月の土石流の影響は限定的。在宅勤務や移住を見据えたマンションの需要が高い。

 伊東市 
 住宅地は0・9%下落したが、下げ幅は前年より0・4ポイント縮小した。新型コロナウイルスの影響で、市内全域で首都圏在住者が一戸建て物件を求める動きが活発化している。建物付きで総額1千万円前後の取引がある。即時に入居が可能な物件の引き合いが強い。
 商業地は1・7%の下落。動きはほとんどみられない。

 下田市 賀茂郡 
 下田市は住宅地が1・5%、商業地は1・4%下落した。人気のある六丁目の高台は5万円台、西中で4万円台後半の取引と下落傾向が続く。蓮台寺の需要は高いが、供給数が少ない。熱海市の土石流災害を受け、土砂災害リスクのある土地は避けられる傾向が生まれた。賀茂郡5町は住宅地、商業地、全地点で下落した。

いい茶0
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