カトリック清水教会 取り壊し決定から1年 地域と所有者の対話重要【解説・主張しずおか】

 築90年近くが経過し、耐震基準を満たしていない木造のカトリック清水教会(静岡市清水区)について、カトリック横浜司教区が昨夏取り壊しを決め1年余り。地域住民らが保存を求め続けるなか、工事の日程は決まらず、取り壊しは宙に浮いたままになっている。戦争遺産としての側面もあり、地域と所有者は対話加速が必要だ。

カトリック横浜司教区が解体を決めた一方、地域住民らが保存を求めているゴシック様式の「カトリック清水教会」=9月中旬、静岡市清水区
カトリック横浜司教区が解体を決めた一方、地域住民らが保存を求めているゴシック様式の「カトリック清水教会」=9月中旬、静岡市清水区

 欧州の教会は石やれんが造りだが、専門家は「清水教会は西洋の伝統的な建築形式を『翻訳』して、日本の木造技術を生かして造られている」と話す。二つの鐘楼とゴシック様式が特徴的だ。
 清水教会は1945年7月の空襲や艦砲射撃を免れ、多くの負傷者の救護所にもなった。6千世帯、1万2千人を擁する文教地区の岡地区連合自治会の小林靖明会長(76)は「地元の多くが保存派。港町の雰囲気を伝える建造物として清水港に寄港するクルーズ船の外国人客にもアピールできる」と話す。署名も約8千筆を集めた。
 静岡市文化財課によると、市内には市役所本館(あおい塔)など計36の国登録有形文化財があり、担当者は「カトリック清水教会も所有者の申請で登録が認められる可能性は十分ある」と話す。
 一方、7月上旬に田辺信宏市長らが横浜司教区に赴いた際には、津波や洪水のハザードマップで清水教会の目の前まで浸水することや、教会建物敷地を含め司教区が保有する周辺の土地全体の利用方法などを理由に建て替えの方針に変更がないことが示された。ただ、「取り壊しに反対する声にもしっかり耳を傾けております」との話もあったという。
 文化庁の担当者によれば、各種助成や税制上の優遇措置を受けられる国登録有形文化財への登録申請は日本の場合、所有権者のみ許される。担当者は「抜本的な解決策を探ろうとすれば、行政やNPO法人などの第三者が買い取る方法しかないのではないか」と取材に対し述べた。
 陣内秀信法政大特任教授(イタリア建築史)は、古い建物やリノベーションの価値を理解してもらうため「当事者同士が対話を続けることが重要」と話す。その上で日本の場合、所有権を重視するあまり歴史的建造物を継承するための都市計画や文化財保護の制度が世界と比べ遅れている、と指摘した。
 地域の歴史的建築物は“誰のもの”か―。清水教会の保存問題が県内での議論のきっかけになればと思う。
 

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