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特集 : こち女

企業の公式ツイッター 「中の人」の醍醐味は?【こち女特集】

 企業の公式ツイッターの運用担当者は「中の人」と呼ばれる。人との接点が減った新型コロナウイルス禍も、ツイッターを使えば不特定多数に情報を“拡散”できる。日々のツイート(つぶやき)でフォロワー(定期閲覧者)を増やし、自社商品の宣伝や販売、イベント開催など現実の接点を生み出している、中の人。県内の3人に、中の人の醍醐味[だいごみ]を聞いた。

常世田麻子さん
常世田麻子さん
窪田てるみさん
窪田てるみさん
望月美佐さん
望月美佐さん
常世田麻子さん
窪田てるみさん
望月美佐さん


 ■茶農家集団ぐりむ 常世田麻子さん
 共同茶工場を運営する茶農家集団ぐりむ(静岡市清水区)の常世田麻子さん(38)は、公式ツイッターで「ぐり子」を名乗る。メンバー唯一の小売り、広報担当。「千葉出身。静岡に移住してお茶が大好きになった一消費者」として、茶の飲み方や食べ方、茶菓子、茶器、お茶カフェなどの情報を毎日発信している。
 ガラスボトルに自社の茶葉と果実を漬けたフルーツティー、花形の器に塩とごま油であえた茶殻-。投稿時にはお茶だけでなく、果物や調味料、ボトル、器など、自宅で愛用する物品の購入先も合わせて紹介する。「果物好きの人、器好きの人…。ツイッター上では誰の目に留まるか未知数」。お茶以外の“フック”をちりばめる。
 ぐりむの直販サイト開設に合わせて、2020年春、投稿を始めた。メンバーは農家の男性ばかり。初めは農家のふりをして、茶刈り機から撮影した風景動画などを「泥臭い男性口調」で投稿したが、お茶に関心がない層には響かなかった。思案するうち、自分がお茶に見向きもしなかったのに、静岡茶に出合い、はまった経験を思い出した。「県民には当たり前でも、県外の人には新鮮な感動を呼び起こすことがある。よそ者目線を大切にしよう」と決め、「ぐり子」が誕生した。フォロワー数は4000に近づく。
 今夏、フォロワーからの提案を機に、全国22カ所の銭湯で自社の茶葉を湯船に浮かべるイベント「新茶の湯」を開催した。各地の銭湯と利用者や関係者が次々にツイートし、「ぐりむの茶」が広まった。「ツイッターは異業種とのコラボを生みやすい。自分では想像もつかないアイデアが湧き、雪だるま式にフォロワーを巻き込んで、面白いことが次々に現実となる」
 ぐりむのメンバーは「銭湯? なぜ?」と目を丸くした。ツイッターからの注文や関連イベントで得る収益よりも、手間の方が上回ることも少なくない。それでも全国の誰かが静岡茶を買うきっかけになればうれしい。「買わなかった人が買うようになる。0を1に変えることが一番難しいからこそ、1を生むことに価値がある」
 
 ■漫画クリエイター 窪田てるみさん
 個人事業主として働く人も活用している。「仕事はご縁の積み重ね。ツイッターは、個人で気軽に起こせるアクションの一つ」。静岡市清水区の漫画クリエイター窪田てるみさん(49)は、キャリアの復活につなげた。
 2007年に長男を産む直前まで、イラスト制作や印刷物のデザインを手掛けていた。その後長女も生まれ、約10年間、本格的な仕事から遠ざかった。子どもが成長するにつれて「社会から必要とされている実感」を取り戻したくなったが、以前の人脈は途絶えていた。
 イラストを発表する場として18年に運用を始めた。活躍中のクリエイターをフォローし、同業者が集うイベントなどに足を運んだ。実績をまとめた作品集の作り方や、制作に役立つサービス-。投稿を参考にしながら、営業活動を再開した。
 今年1月、市内で初めて個展を開いた。新聞広告や母親向け情報サイトに漫画を執筆するなど、仕事は再び軌道に乗り始めた。現在、約1500人のフォロワーがいる。
 信用につなげるため、自分の「人となりと考え方」を積極的に開示している。ツイートが発端となり、新たな仕事を得ることもある。「一番の楽しさは、家にいながら人と交流できること」。クリエイター同士の情報交換にとどまらず、互いの存在が励みになっている。
 
 ■ピオニエス 望月美佐さん
 「おはピオです。しぞーか晴。今日もボチボチ頑張ろう」。温泉水を使ったペット用ミストを開発、販売するピオニエス(焼津市)の公式ツイッターは毎朝、絵文字付きの軽いあいさつから始まる。今年3月、社長の望月美佐さん自ら投稿を始めた。発売間近だったミストの認知度向上につなげたかった。
 毎日3回、投稿を続けた。「会社のある焼津はこんな場所」との思いを込めて、空模様や目に映る景色、地元のおいしい食べ物を発信。自社の宣伝は「たまに」。フォローされると、フォローを返すようにした。半年たった現在のフォロー数とフォロワー数は、それぞれ約2800。県内外の企業公式アカウントが大半で、ピオニエス商品の購入者もいる。
 一部のフォロワーとは直接メッセージを交わしている。「お得なセット販売をしてほしい」と要望を受け、すぐに3本セットの販売を開始した。購入者から商品の使い方を相談されれば、できる限りの情報を伝える。
 企業公式のフォロワーとは、互いの商品を紹介し合う。ある商店主がコロナ禍で客足が途絶えたと嘆いた時には、別のフォロワーと一斉に、その店の名産品を買って投稿した。逆に、ピオニエスが東京の特設会場で商品販売を始めたが、自分は緊急事態宣言下で売り場へ行けず様子が分からない-と投稿すると、複数のフォロワーが会場に足を運んで商品を買い、知らせてくれた。
 短文でさらりと発信できるのは、ツイッターの利点。「恩着せがましくならない範囲で、私も人のために、自分ができることをやりたい」。フォロワーとの関係に、うわべではない心からのつながりを感じている。
 
 ■公式ツイッター運用に詳しいマーケティング調査会社トムスの荒木健太さんの話
 ツイッターは、自分の会社や商品に愛着があり、大勢に知らせたい人に最適。特に、商品開発の背景を社員が「自分ごと」として共有している小さい会社ほど、フォロワーを獲得しやすい。
 企業の「中の人」は大抵1人。投稿時には、中の人の性格や普段の口調を出すことをおすすめする。フォロワーに親近感を与える。本来の企業イメージと中の人のギャップが引き立つほど面白い。「企業そのものよりも、中の人が好き。だからそこの商品を買う」というフォロワーはたくさんいる。

いい茶0

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