事故から再起 元力士自慢の味「ちゃんこ」自販機 静岡市駿河区

 新型コロナウイルス禍を契機に、非対面の販売方法として改めて脚光を浴びた「自動販売機(自販機)」。静岡市駿河区に珍しい「ちゃんこ」の自販機があると聞いて、早速出動した。先日の「クラウンメロンが当たる!? 袋井で噂の自販機、訪ねてみました」 「温泉の自販機!? 伊豆市原保地区、噂の現場を訪ねてみました」「オーレ藤枝の自販機22台「非対面店舗」 人気ベスト5は?」に続く自販機シリーズ第4弾。

看板商品が並ぶ冷凍の自動販売機=静岡市駿河区
看板商品が並ぶ冷凍の自動販売機=静岡市駿河区



 現場は静岡大橋西交差点のすぐ南側、ちゃんこ鍋店「ごっちゃぁん」(静岡市駿河区東新田)の店先。故・元九重親方(元横綱・千代の富士)に才能を見いだされて角界入りした元力士・千代の灘の山中与志久さん(49)が営む店だ。 photo01 現役時代の千代の灘。突き、押しで真っ向勝負を挑む取り組みが特徴だった
 引退後に地元に戻り、姉さゆりさん(53)と長年店を切り盛りしてきたが、コロナ禍が経営を直撃。そんな中、看板商品を24時間販売できる自販機の設置に活路を見いだした。これまでも一部メニューのテークアウトは扱っていたが、「営業中に声を掛けるのが申し訳ない」「ちゃんこ店に入る勇気がない」などの声を耳にしていた。新規客の獲得にもつながると考え、7月に設置した。
 しかし8月下旬、交通事故に巻き込まれて自販機は大破。知名度が上がってきた矢先の出来事だったが、そこはさすが、けがから復活して序二段優勝を果たした経歴を持つ元千代の灘。力士時代の活躍さながら素早く2台目を調達し、店先での自販機販売を再開した。
 自販機では、あっさり醤油ベースのちゃんこ鍋スープや肉団子などを販売している。このほか、炭火つるし焼き豚も並ぶ。ちゃんこ鍋店の前身は、元々父の故・芳夫さんが営んでいた精肉店。焼き豚はその頃からの人気商品で、ちゃんこと二枚看板を背負ってきた。「この店では『ビールに枝豆』ではなく『ビールに焼き豚』と注文する人がほとんど」(さゆりさん)という。 photo01 元九重親方の書
 緊急事態宣言中は店内飲食は休業中だが、自販機は24時間購入可能で、テークアウトも受け付けている。店内に飾られた元九重親方の書が励みになっている。与志久さんは「まだまだ限界じゃない。気力もなくなっていない」。さゆりさんは「コロナに事故にと土俵際に立ったが、ここから勝ち星を狙う」と前を向く。季節ごとの商品入れ替えなど、自販機の魅力向上策も練っている。

 〈記者メモ〉おいしそうな匂いの炭火つるし焼き豚が気になり、調理の様子を見せていただきました。等級「上」の国産豚肩ロースを、焼く前々日からお手製たれに漬け込むのだとか。焼く間に水分などが抜けて、うま味が凝縮し、重さが4割減るそうです。 photo01

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