電子楽器テルミン普及に使命感 まひ経験の竹内さん(浜松)

 電子楽器「テルミン」の演奏・研究の国内第一人者、竹内正実さん(54)=浜松市西区=が今秋から、障害者への普及に本腰を入れる。福祉の観点ではなく、「1人1人のミュージシャンとしての可能性を見いだしたい」と強調する。右半身まひを患った自身の経験を踏まえ、音楽界の拡大につながると意欲を見せる。

マトリョミンを奏でる竹内正実さん。「楽器に人生を救われた」と言葉に実感を込める=9月上旬、浜松市西区
マトリョミンを奏でる竹内正実さん。「楽器に人生を救われた」と言葉に実感を込める=9月上旬、浜松市西区

 かすかに揺れるハミングを思わせ、風が鳴るような旋律が、浜名湖に近い竹内さんの事務所に響く。音の正体は、ロシアの民芸品マトリョーシカの形をしたテルミン「マトリョミン」。利き手とは逆の左手で奏でる。「時々、利き手がどちらだったか分からなくなる」。柔和な笑みを浮かべるが、道のりは順風満帆ではなかった。
 2016年、コンサート中に脳出血を発症し、今も後遺症がある。当初は右手での演奏を模索したが、納得のいく音色は戻らず、「自分に失望した」。そこで左手での演奏を試みると、「新たな世界が見えた」という。自身の練度が増すことが「生きる糧になる」と感じた。
 障害者への普及の思いが高まったのは、新型コロナウイルス禍がきっかけだった。今春に発表した音源の録音に没頭する中で自身を見つめ直し、新たな使命と思い立った。演奏がまひ患者のリハビリになるだけでなく、視覚障害者らの潜在能力を引き出す機会にもなると確信した。「『音楽なんてできっこない』と決めつけている人にこそ魅力を伝えたい」と意気込む。
 19年、総勢289人のテルミン合奏を企画し、ギネス記録を樹立した。その金字塔を、障害者だけで更新したいと目標を見据える。「1993年にロシアにわたって演奏技術を学んで以来、テルミンは私の人生のすべて。今、人生の再生のチャンスを得た」。新たな夢への挑戦が始まる。
 (浜松総局・伊藤龍太)

 ■10月 初の講座開催
 竹内正実さんによる講座「触れずに奏でるマトリョミン―ハンディキャップがあっても大丈夫!」が10月3日午前10時半~正午、浜松市中区のSBS学苑浜松校で開かれる。
 マトリョミン演奏講座を開講してきた竹内さんにとり、障害者の受講を主眼に置いた講座は今回が初めて。受講料は管理運営費を含めて2310円。
 問い合わせは同校<電053(455)3359>へ。

 〈メモ〉テルミン 最古の電子楽器とされるテルミンは1920年ごろにロシアの物理学者レフ・テルミンが開発した。ラジオの仕組みを応用して高周波を発信し、本体左右のアンテナに手を近づけたり離したりして電波に干渉することで、音高と音量をコントロールする。テルミンを小型化し、親しみやすい形状にしたマトリョミンは、竹内正実さんがテルミンの普及に向けて開発した。電子回路とアンテナを内蔵している。


 

いい茶0
メールマガジンを受信する >