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特集 : こち女

学校給食 アレルギーあっても安全に、楽しく【こち女】

 子どもたちの健康や食習慣作りに大切な役割を果たす学校給食。食物アレルギーがある子どもたちも給食の時間を安全に楽しく過ごせるよう、現場ではさまざまな取り組みが進められている。静岡県内の先進事例や課題を紹介する。

学校給食での食物アレルギー対応
学校給食での食物アレルギー対応
藤枝市との意見交換会など、これまでの活動を振り返る「ふじえだアレルギーっ子の会」の杉山美穂代表(左)とメンバー=6月下旬、藤枝市内
藤枝市との意見交換会など、これまでの活動を振り返る「ふじえだアレルギーっ子の会」の杉山美穂代表(左)とメンバー=6月下旬、藤枝市内
学校給食での食物アレルギー対応
藤枝市との意見交換会など、これまでの活動を振り返る「ふじえだアレルギーっ子の会」の杉山美穂代表(左)とメンバー=6月下旬、藤枝市内


 ■除去食など対応に地域差 静岡県内、専用調理室設置は5%
 文部科学省の2013年調査によると、児童生徒の食物アレルギーの有症者は全体の4.5%。学校給食での対応は、同省の「学校給食における食物アレルギー対応指針」などに沿って行われる。同指針は「対応の大原則」の一つとして、「食物アレルギーを有する児童生徒にも、給食を提供する。そのためにも、安全性を最優先とする」と明記している。
 同指針によると、食物アレルギーについて特別な配慮を希望する保護者は、医師が診断して原因食物などを記入する「学校生活管理指導表」を学校に提出する。学校には一人一人の対応方針を決める「食物アレルギー対応委員会」を置き、教育委員会は各校の取り組みを支援する。
 アレルギー対応の内容は「レベル1~4」に分けられる。原材料を詳細に記した献立表を事前に配布し、それを基に保護者や担任の指示、または本人の判断で給食から原因食品(果物など単品)を除いて食べる対応が「レベル1」。
 対応として望ましいとされるのは、申請があった原因食物を給食から除いた「除去食対応」(レベル3)や、さらに別の食材を代わりに用いて提供する「代替食対応」(レベル4)。ただ、調理場の設備や人員の状況により、安全が確保できない場合には、各家庭での「弁当対応」(レベル2)になる。
 県教委によると、公立小中・義務教育学校で給食の食物アレルギー対応をしている児童生徒は5340人(19年5月時点)。対応内容の割合は、詳細な献立表対応が41%、弁当対応(一部・完全)が24%、除去食対応が28%、代替食対応が8%と分かれる。
 除去食や代替食の調理には専用調理室があることが望ましいが、県内の調理場344施設(単独274施設、共同70施設)のうちわずか5%にしかない。静岡新聞社の取材によると、専用調理室を備えた調理場が1カ所以上あり、実際に使用しているのは35市町のうち静岡市や袋井市、長泉町など11市町にとどまる。自治体間に差があるほか、同じ自治体の中にも地域差があるのが実情。一方、近年、給食センターを新設する場合には専用調理室を設ける自治体が増えている。
 袋井市の学校給食アドバイザーで、アレルギー対応に詳しい金田雅代女子栄養大名誉教授は「給食は食習慣の形成に大きな役割を果たすため、どの子どもの一食もおろそかにできない」と指摘した上で、「安全性が最優先だが、設備や人員不足を理由にアレルギー対応が進まないのも問題だ。どうすれば一歩でも前進させられるか、知恵を絞るのが学校設置者の責任ではないか」と訴えた。

 ■袋井 全市で代替食を提供
 袋井市は市内3カ所全ての給食センターで、アレルギー対応食(代替食)の提供に取り組んでいる。2013年開設の中部学校給食センターに専用調理室の設置が計画された際、全市で統一した対応をするため、既存の2センターにも専用調理室を整備した。同市教委おいしい給食課の石塚浩司さんは「安全にアレルギー対応を進めるには、施設整備だけでなく、人的、組織的な取り組みが不可欠」と強調する。
 各センターにはアレルギー対応専属の管理栄養士を置き、代替食の献立作成や、対象者の保護者と月1回行う面談などに当たる。調理を担当する委託会社の栄養士や調理員も専属として配置する。
 対応する原因食物は乳、卵、小麦、種実類、果物類など10品目。市内の園児、児童生徒約100人に対応食を提供している。調理作業が複雑にならないように、1メニュー5品目(主食、主菜、副菜、汁物、デザート)のうち対応食は2品目以内を目標にし、週1回はアレルギー対応せず全員が食べられるメニューにしている。
 同市はアレルギー対応委員会を各校のほか、各給食センター、市教委にも設ける。対象の児童への対応内容について学校、センターで検討した上で、学校医や食物アレルギー専門医も交えた市教委の委員会で最終決定する。
 誤食や、既往のない児童がアレルギーを新規発症する場合に備え、消防や病院とも「食後に体調異変があれば、ためらわずに救急車を要請する」と申し合わせている。石塚さんは12年に東京都調布市で乳製品アレルギーのある女児が給食の誤食で亡くなった事故に触れ、「アレルギー対応は子どもの命に関わる。強い危機感の下、今後も取り組みを進めたい」と語った。

 ■藤枝市、保護者の会と意見交換 子どもに寄り添った〝工夫〟も
 藤枝市は2012年から、食物アレルギーの子どもがいる保護者の会「ふじえだアレルギーっ子の会」(杉山美穂代表)との意見交換会を継続的に開いている。学校給食課の担当者と献立作成に関わる栄養教諭、保護者らが集まることで、子どもに寄り添った“工夫”も生まれた。
 意見交換会は、同会の要望で始まった。同市では、小中学校の給食調理を担う給食センター3カ所いずれにもアレルギー対応食の専用調理室がなく、除去食や代替食の提供はない。同会の保護者は日々、子どもに弁当を持たせている。それでも杉山さんは意見交換会を通じ、「子どもの気持ちをくんだ対応をしてもらえるようになった」と語る。
 例えば、同市は毎月、給食で提供するデザートの写真やサイズを市のウェブサイトに掲載している。アレルギーがある児童は給食のデザートが食べられず、家から持参するケースがある。ただ、友人と違うデザートの見た目を気にする子もいる。保護者が市にこの状況を伝えると、事前に情報が提供されるようになり、持参するデザート選びの参考になっているという。また、「アレルギーがある子どももそうでない子も一緒に食べられる献立の日も増えた」と同会の三浦理恵さんは喜ぶ。
 同市は本年度、給食センターの統合に向けた構想の策定に着手した。新施設にはアレルギー対応食の専用調理室を設けることも検討している。

 

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