江戸時代の富士山巡礼路、明らかに 静岡県世界遺産センター調査

 静岡県富士山世界遺産センター(富士宮市)はこのほど、富士市、富士宮市と共同で富士山の大宮・村山口登山道を調査し、富士山本宮浅間大社、村山浅間神社を経て山頂に達する江戸時代の巡礼の経路をおおむね明らかにした。調査結果を報告書にまとめた。

村山浅間神社に隣接する村山口登山道の石碑。行政は調査で明らかになったルートの活用法を模索する=富士宮市
村山浅間神社に隣接する村山口登山道の石碑。行政は調査で明らかになったルートの活用法を模索する=富士宮市

 調査は、巡礼路の位置・経路の全体像を描くよう求めたユネスコ(国連教育科学文化機関)世界遺産委員会の勧告に基づいて行った。学識者でつくる「富士山巡礼路調査委員会」の助言を受け、2017~20年度に実地調査した。中心的な役割を果たした同センターの大高康正教授は「(現在は使われていない)六合目から下のルートを明らかにしてほしいという地元要望も強かった」と振り返る。
 明治20(1887)年に国の陸地測量部が調査した地図、1993年の富士宮市教委による調査報告書などを基礎資料に、現況を歩いて確かめた。衛星利用測位システム(GPS)データや国土交通省が作成した赤色立体図で地理的環境も調べた。東海道と巡礼路を結ぶ「派生3ルート」の位置も再調査した。
 さまざまな文献に出てくる登山道沿いの石の道標や、宗教施設の跡地も詳細に調べた。須山登山道や吉田口登山道との比較から、富士山の登山道は拠点神社や堂の配置がどれも似通っていることが分かってきたという。
 大高教授は「かつての道が市街地化しているなどで難航したが、一番可能性の高いルートを提示できた」と成果を口にした。
 調査結果は同センターで12日まで開催中の「富士山表口の歴史と信仰」展で紹介している。ユネスコに提出する保全状況報告書にも盛り込まれる。
 今後の課題は、かつての登山道をまちづくりや観光施策にどう生かすかだ。15~18年度に実施した須走口の巡礼路調査の結果は、須走まちづくり推進協議会(事務局・小山町)によって登山道を紹介する動画や、パンフレットに生かされている。
 大宮・村山口登山道の調査結果については、富士市や富士宮市が検討中という。富士市文化振興課の井上卓哉主幹は「神域を行き来する心構えだった江戸時代の登山者を理解する一助になれば」と、調査結果の活用を模索する。
 (文化生活部・橋爪充)

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