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避難所での遊びや勉強 熱海高生が支援 被災児童に「日常」提供

 大規模な土石流が発生した熱海市で、熱海高校(鈴木康之校長)の生徒有志が夏休み中、被災者が生活する避難所に通い、子どもの支援を行った。遊びや勉強に楽しそうに取り組む子どもとのコミュニケーションを通じて、避難生活で「日常的な活動」を提供することの重みを実感するなど、生徒自身の学びにつながっている。

避難所での子ども支援で気付いたことを語り合う生徒たち=1日、熱海市の熱海高
避難所での子ども支援で気付いたことを語り合う生徒たち=1日、熱海市の熱海高

 避難所となったホテルに設けられた子ども用の遊び場は、被災地の子ども支援で実績がある認定NPO法人カタリバ(東京都)が運営した。運動ができる部屋とお絵描きや語らいができる部屋が用意され、子どもたちは日中の好きな時間に訪ねることができた。展開に向け、カタリバが旧知のNPO法人しずおか共育ネット(静岡市)を介して、同校に連携を打診。学校側が夏休み前に告知したところ、以前伊豆山地区に住んでいて「恩返しをしたい」という生徒や、被害状況に心を痛めていた生徒など約40人が申し込んだ。支援は7月27日から始まり、まん延防止等重点措置に伴い高校生の参加が打ち切りとなった8月6日までの11日間、続けられた。
 夏休みが明けた9月1日、活動を振り返り、次の行動を考えるワークショップが開かれた。生徒たちは「子どもがほかの子に『一緒にやろう』と声を掛ける姿を何度も見掛け、優しさに胸を打たれた」「行く前には悲しいことが多いかもしれない、笑ってくれるだろうか、と心配していたが、元気な姿が印象的だった。こちらが変に気を遣わなくても良いと感じた」などと気付いたことを語り合った。
 生徒たちの話によると、子どもたちはすぐに生徒を「○○ちゃん」などと呼び、親しくなった。別れ際には翌日も遊ぶ約束を求めてきたという。同校のボランティア部長を務める3年の土谷友真さん(17)は「毎年の夏休みにやっているような楽しいことをしたかったのかも」と推察する。子どもたちの被災状況についても「こちらからは聞かないようにしていたが、慣れてくると自ら語る子もいた」と話す。心情に寄り添う活動に手応えや関心を抱いた生徒からは「今後も続けたい」との意見が相次いだ。所康俊副校長は「コロナの影響で、昨春からボランティアなど対外的な活動が制限される状況が続くだけに、生徒にとっては貴重で、学びを得る経験になった」と、活動の場が提供されたことに感謝を語った。

 ■次につなぐこと重要
 熱海高生の活動を支えた同ネットの井上美千子代表理事は「地域での活動を通じて自己肯定感を高め、次につなげることが重要」と見据える。避難所での活動を振り返った後、何ができるか意見交換を行った。感染の急拡大で直接の触れ合いができなくなっている中「子どもとリモートで一緒にラジオ体操をしたい」など、緊急事態宣言の中でも持続可能な新たなコミュニケーション方法について、生徒たちは模索している。

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