追っかけわたしの特集

特集 : こち女

健康食基準「スマートミール」認証 静岡県内事業者間で取得進む

 厚生労働省が定めた目安に基づく健康食の基準「スマートミール」。食や健康に関わる学術団体が協力し、基準に沿った食事を健康的な環境で継続的に提供する店舗や事業者を認証している。目指すのは、自炊が難しい人でも健康的な食事に手が届きやすい環境づくり。制度や県内の認証例を紹介する。

天神屋がスマートミールとして発売を準備する中華丼の試作品(右手前)。既存の商品を組み合わせたセットメニューも売り出す予定=8月下旬、静岡市駿河区の天神屋曲金店
天神屋がスマートミールとして発売を準備する中華丼の試作品(右手前)。既存の商品を組み合わせたセットメニューも売り出す予定=8月下旬、静岡市駿河区の天神屋曲金店
レストラン「浮殿」がランチで提供しているスマートミール=8月中旬、静岡市葵区の同店
レストラン「浮殿」がランチで提供しているスマートミール=8月中旬、静岡市葵区の同店
「健康のためには、適切な質と量の食事を継続することが基本」と語る市川陽子教授=8月上旬、静岡市駿河区の県立大
「健康のためには、適切な質と量の食事を継続することが基本」と語る市川陽子教授=8月上旬、静岡市駿河区の県立大
スマートミール基準
スマートミール基準
天神屋がスマートミールとして発売を準備する中華丼の試作品(右手前)。既存の商品を組み合わせたセットメニューも売り出す予定=8月下旬、静岡市駿河区の天神屋曲金店
レストラン「浮殿」がランチで提供しているスマートミール=8月中旬、静岡市葵区の同店
「健康のためには、適切な質と量の食事を継続することが基本」と語る市川陽子教授=8月上旬、静岡市駿河区の県立大
スマートミール基準

 ■外食、持ち帰り… 県内事業者 取得進む
 スマートミール認証は、国が健康増進や食育推進に関わる計画で目標とする「主食・主菜・副菜を組み合わせた食事」の普及を支援する。国はこうしたバランスの良い食事を1日2回以上、ほぼ毎日取る人の割合を増やす目標を掲げている。
 実施主体は、日本栄養改善学会や日本給食経営管理学会など13団体でつくる健康な食事・食環境コンソーシアム。認証の対象は外食のほか、持ち帰り弁当などの中食[なかしょく]、給食を提供する店舗や事業者だ。
 スマートミール基準は、厚労省が2015年に国として初めて示した生活習慣病予防や健康増進を目的とした「食事の目安」などに準拠。成人1食あたりの主食、主菜、副菜などの摂取量やエネルギー、食塩量などを活動量に応じて「ちゃんと」と「しっかり」の2段階で規定した。
 認証には、スマートミール基準を満たした食事の継続的な提供のほか、提供時の分かりやすい説明や禁煙環境の整備などが必須。魚を積極的に取り入れたり、塩分をさらに控えたりすることで「星付き認証」を得ることも可能だ。
 ■既存商品に工夫
 県内で27店舗を展開する弁当製造販売の「天神屋」は8月、認証を取得した。スマートミールを推進する県立大の市川陽子教授らの助言を受け、既存メニューから定番の中華丼をスマートミール化。基準に沿って野菜を増やし、鶏だしを効かせて塩分量を抑えた。
 スマートミールは主食、主菜、副菜とそれぞれ基準を示すが、一つの料理にまとめることも可能。具材に豚肉やエビなども含む中華丼は、単体で「しっかり」の基準をクリアした。
 同社ではさらに、既存商品の総菜とサラダ、おむすびを組み合わせて基準を満たすセットメニューも考案。中華丼と併せ、近日中に店頭での案内、販売を始めるという。
 認証取得に携わった管理栄養士の竹田由紀奈さん(32)は「少しの工夫で、思ったより簡単に取り組める」と感触を話す。セットメニューの考案では、サラダのドレッシング量を減らすなど既存商品の仕様を変更した。「減らしてもトマトの甘みで十分おいしい。スマートミールの視点で見直せる商品は多いかもしれない」
 ■社員食堂でも
 制度開始からこれまで5回の審査があり、全国で536事業者が認証を受けた。県内は外食で5事業者、中食で5事業者、給食で28事業者が認証されている。健康経営の関心の高まりから企業の関心は高く、社員食堂での取得が目立つ。
 誰にでも健康的な食事が手に届く環境づくりを進める趣旨から、コンソーシアムでは外食や中食の申請も増やしたい考え。新型コロナウイルス禍で中食需要が高まる中、運営関係者は「健康をキーワードにした商品の差異化に認証を活用してほしい」と期待する。
 ■基準クリアの料亭ランチ しょうゆ減、みそ汁避けお吸い物に
 マグロやタイの刺し身をメインに、黒はんぺんのフライやカボチャの煮付け、桜エビと水菜のおひたしなどの小皿が4品。白米に吸い物、デザートは抹茶のババロア。静岡市葵区の浮月楼内にあるレストラン「浮殿」が提供するスマートミールだ。
 見た目も食欲をそそる弁当膳は合計649キロカロリー。栄養バランスを含め、活動量がそれほど多くない人向けの「ちゃんと」の基準を満たす。ランチの限定メニューとして4月から提供し、8月に認証を受けた。
 「日本料理の職人は自分の舌頼み。計量という習慣がなかった」と若おかみの久保田暁子さん(43)。メニュー開発のため、初めて厨房[ちゅうぼう]に計量スプーンを導入し、塩分量を測った。
 多様な食材を使い、いくつもの小鉢で味に変化を付けた。刺し身に添えるしょうゆも減量。塩分量が多くなりがちなみそ汁は避け、吸い物の具はごぼうなどを取り入れて香りを立たせた。
 一方で、取り組んで分かったのは「和食のすごさ」。基本は普段通りの味付けで通じた。久保田さんは「職人が塩分量を数値で認識できるようになったのは大きな変化。より健康な料理を意識できる」と話す。
 ■自炊できなくても「健康」かなえる 県立大 市川陽子教授(フードマネジメント)
 制度の特徴や意義を、日本給食経営管理学会理事で審査も担う県立大の市川陽子教授(フードマネジメント)に聞いた。
     ◇
 ―日本人の食を巡る現状は。
 「外食や中食への依存度が高まる一方で、生活習慣病の増加などを背景に健康への関心は強い。食と健康に関する情報は世の中にあふれ、消費者は特定の食品や極端な食べ方、機能性をうたったサプリメントなどに飛びつきがちだ」
 ―そうした現状をどう見るか。
 「もともと量や質が適切でない食事に、いくら機能性食品などを足しても健康にはなりようがない。かえって不健康な食べ方を助長する可能性もある。適切な量と質の食事を日常的に摂取するという食の基本に立ち返る必要がある」
 ―そこでスマートミール認証ができた。
 「健康的な食事は自炊をすれば容易だが、毎日家で手作りの食事ができる人は限られる。スマートミールは、自炊できなくても誰もが健康に配慮した食事を取れる場や商品を増やすことを目指している。そうした食環境の実現が、国民の健康寿命を伸ばす鍵になる」
 ―特徴は。
 「健康食は味が薄くまずい、量が少ないというイメージがあるが、それでは続かない。スマートミールの基準は科学的根拠はもちろんだが、実行可能性も重視した。栄養素レベルでなく食品ベースで考え、おいしさや満足感を大事にしている。おいしそうだと思って選んだらスマートミールだった、というのが理想だ」
 (西條朋子)

いい茶0

こち女の記事一覧

他の追っかけを読む