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赤ちゃんと一緒、演劇を「体験」 子育て中のSPAC俳優ら 静岡拠点に舞台「ベイビーシアター」制作

 赤ちゃんと大人が一緒に楽しむ体験型の演劇「ベイビーシアター」。ヨーロッパ発祥で国内ではまだ触れる機会は少ないこの演劇を県内に広めようと、県舞台芸術センター(SPAC)の作品に出演する俳優仲村悠希さん(37)ら有志が、地元の静岡市を拠点に活動を始めている。

ベイビーシアターを楽しむ親子。せりふはなく、音や光、俳優の動きだけで物語を表現した=7月下旬、静岡市葵区
ベイビーシアターを楽しむ親子。せりふはなく、音や光、俳優の動きだけで物語を表現した=7月下旬、静岡市葵区

 7月、市内で仲村さんが企画した初作品「あ・くーあ」を上演した。タイトルは水を意味する「アクア」と赤ちゃんの発する喃語(なんご)に着想。京都を拠点とする専門劇団「ベベリカ・シアターカンパニー」の弓井茉那さん(36)を演出に迎え、仲村さんと俳優仲間の大内智美さん(44)が、水が育む命の物語を演じた。
 会場の古民家の広間は布に覆われ、青い照明が水底のよう。俳優が踊るように現れ、赤ちゃんを抱いて車座になった参加者を巻き込みながら、水から生まれ、やがて消えてゆく命を表現した。せりふはない。赤ちゃんは膝を離れて光や音、俳優の動きを追い、笑い声を上げた。
 舞台の“解釈”は自由だ。「相手は赤ちゃん。こちらの意図と違う反応でも、そこを含めて作品」(弓井さん)という。7カ月の娘と参加した静岡市駿河区の前島めぐみさん(32)は「人の動きや音によく反応していた。この子がいて、空間が出来上がる感じが面白い」と話した。
 自身も4歳になる娘がいる仲村さんは、数年前に都内でベベリカの公演を鑑賞し「赤ちゃんの視点で世界を見る」というコンセプトに共鳴。新型コロナウイルス禍を受けた文化芸術活動に対する県の助成を受け、5月ごろから弓井さんや子育て中の演劇仲間と、オンラインも活用して作品作りに取り組んだ。
 観客は親子と限らない。仲村さんは「子育てで孤立する人がいる一方、生活の中で小さな子どもに触れる機会がない人も多い。演劇が何かの接点になれば」と期待する。今後も継続的に上演し、作品の完成度を上げていく考えだ。
 
 <メモ>ベイビーシアター 舞台の観客として捉えられてこなかった赤ちゃんに演劇体験をもたらそうと、1980年代にイタリアやフランスで始まった舞台芸術。仲村さんらは赤ちゃんを共に舞台を作る“共演者”と捉え、新しい体験の場を共有することで、大人の発見や変化も企図する。

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