緊急事態の静岡 学校現場、対応を模索 熱中症対策との両立難しく

 新型コロナウイルスの感染急拡大に伴い、静岡県には9月12日まで、昨春に続き2度目の緊急事態宣言が発令されている。感染力の強いインド由来のデルタ株へ置き換わり、事業所や子どもの学びの場など、ワクチン未接種の世代が集まる場所でクラスターが相次ぎ、家庭内感染も際立つ。これまでにない危機的状況とも言える「第5波」に学校現場は対応を模索し、小児科の診療も緊張状態が続いている。

発熱した子どもを診察する河原秀俊医師=静岡市駿河区のかわはら医院
発熱した子どもを診察する河原秀俊医師=静岡市駿河区のかわはら医院
静岡県の年齢別感染者割合
静岡県の年齢別感染者割合
発熱した子どもを診察する河原秀俊医師=静岡市駿河区のかわはら医院
静岡県の年齢別感染者割合

 流行「第5波」の兆候が見え始めた7月下旬の県内のデルタ株の陽性率は40%だったが、8月下旬には94%に達した。感染者数の最多更新が続いた15~21日の1週間の県のまとめでは、全感染者の約半数を占めたのが0~29歳。65歳以上のワクチン接種済み世代の割合が減り、4月下旬とは割合が逆転している。
 年齢別人口10万人当たりの感染状況をみても20代前半が突出し、20代後半や16~19歳代の高校生年代が続く。
 クラスターの発生場所も飲食店や事業所に加え、若年層が集まる学校や保育園で目立つ。換気などの相応の対策をしても防げない感染事例が増えた。部活動でマスクを外したなど、熱中症防止のための行動がかえってクラスターを招いた事例もあった。
 ■夏休み延長
 感染者数は19日に過去最多の675人に膨らみ、沼津市、焼津市、御前崎市などは事態を重くみて、月末までの夏休み延長を決めた。小児は症状が軽いことが多く「ちょっとした体調不良が実は感染だった」というケースがある。家庭内感染の拡大が深刻になっていることを受け、各市町の教育委員会は本人だけでなく家族にも目を向け「本人や家族に不調の子がいた時は、登校を控えて受診して」と、入念な健康観察を強く呼び掛ける。
 各学校とも感染対策のあり方を議論している。教育活動は文部科学省のガイドラインに基づき、調理実習に加えピアニカやリコーダーの演奏、近距離での長時間のグループトークを控える。
 ■オンライン学習
 感染対策としてのオンライン学習が徐々に広がっている。2学期が始まった吉田町は希望者を募り、30日から授業をライブ配信する。児童生徒は自宅で視聴し、授業で発表することもできる。9月1日から再開する沼津市は学校ごとに各家庭とオンライン接続する日を設けるなどして準備を進めている。文部科学省は小中学のオンライン学習について学校再開後、定着度合いを確認すれば、対面授業で扱わなくてよいとしている。
 ■緊張感の小児科医療 “家族経由”警戒
 感染急拡大を受け、小児科医院で外来の陽性患者を診る機会が増えている。「子どもは症状が軽くうつりにくいとされていたが、デルタ株は普通に家族からうつる。現場はそう念頭に置くようになった」と、静岡市静岡医師会理事の河原秀俊医師は小児科医療現場の緊張感を表現した。
 「ご家族に体調不良の方はいますか」「保育園内の状況はどうですか」―。静岡市駿河区のかわはら医院の受付窓口では、受診者が来るたびに、スタッフが症状だけでなく行動歴や家族、保育施設の状況などを確認する。7月以降、現場で子どもの陽性を確認した際に受付で「家族が感染している」と聞いたことで、ほかの患者との動線分けなど迅速な対応につなげた。いずれも家庭内感染で、「行動範囲が限定される乳幼児はもちろん、小中学生も家族ごと確認することが重要」と河原医師は指摘する。
 健康観察をした自宅療養の子は比較的元気に過ごしていたという。現在医院には発熱、咳での来院が多く、「新型コロナとの見分けがつきにくく、発熱患者の中に陽性者がいないか、引き続き慎重に診断する必要がある」と河原医師。小中学校など夏休み明けの再開時期を迎え、保護者らに向けては「本人や家族に体調不良が少しでもみられた場合、登園、登校させないことが感染拡大防止に欠かせない」と強調した。
 ■インタビュー 大人の「飛沫」感染防止、優先を/体内増殖は従来株の1000倍 静岡県立こども病院 荘司貴代・感染対策室長
 感染急拡大を招いているインド由来のデルタ株は、感染者の体内で増殖する量が非常に多く、従来株の1000倍との報告がある。そのため症状はより強く現れ、人にうつりやすい。新型コロナかどうかにかかわらず、必要な医療を受けられなくなる日が静岡県にも迫っている。
 デルタ株のまん延によって、諸外国では死亡率が上がっている。国内については今のところ、信頼できるデータが出そろっていない。従来株と比べて潜伏期間は3~4日と短く、無症状者は少ないことが分かっている。これまで子どもは大半が無症状だったが、味覚障害や発熱が現れる事例が増えてきたと実感する。
 新型コロナはもともと、発症後1週間前後で急激に肺炎が悪化して低酸素状態が進行することがある。心筋梗塞や脳梗塞を併発するリスクも高まる。デルタ株は、重症化するスピードが速い印象。免疫がなければ高齢であるほど、肥満や基礎疾患のある方ほど重症化する傾向は変わらない。しかし関東圏を中心に感染者数が激増し、入院治療が受けられないために亡くなるケースが出ている。
 感染経路は従来株と同じく、飛沫(ひまつ)感染か接触感染。感染者のつばやくしゃみが目、鼻、口の粘膜に付着してうつる飛沫感染がほとんどだ。従来株は1人が平均2人にうつす計算だったが、デルタ株は5~9人にうつす。これは空気感染する水痘(水ぼうそう)に近い値。家庭に持ち込まれたら、免疫がない限り全員感染する。しかし水痘と違って空気感染はしない。空気の流れが悪い密な環境では、小さな飛沫「エアロゾル」が長時間漂い、感染を広げることがあるが、「空気感染」とは異なる。
 これまでのように会話時のマスク着用と3密回避を徹底すれば防げるが、ウイルス量の多いデルタ株は、感染者の飛沫を少し浴びただけでうつってしまう。手指を介した接触感染の割合は低いため、ドアノブや机、いすなど「環境表面」の消毒に神経質になる必要はない。目鼻口を触る前の手洗いか手指消毒を続けよう。
 県内でも事業所や飲食店でのクラスター発生に加えて、活動範囲の広い大人から子どもへの家庭内感染が目立つ。デルタ株は従来株と異なり、子どもから子どもにも広がる。それでも子どもが重症化することはほぼない。子どもにとってはインフルエンザよりもはるかに身体的影響が少ない。感染は子どもよりも大人同士の方が広がりやすく、「大人から子ども」にうつる割合が高いことに変わりはない。引き続き大人の感染防止を優先すべきで、子どもが感染源になるからという大人の都合で休校や休園をして、子どもらしい生活を奪うべきではないと考える。
 有効と期待される抗体カクテル療法は供給量に限りがあり、投与の対象は基礎疾患など重症化するリスクがある方。流行の収束には、ワクチン接種を進めて集団免疫を得る以外に方法はない。ワクチンはデルタ株にも効く。特に重症化と死亡を防ぐ効果は、従来株に劣らない。できるだけ早く接種して、ご自身だけでなく、大切な方の命も守ってほしい。

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