認定医療法人制度、利用進まず 財産権放棄に不安感「周知不足も」

 地域医療の担い手の存続を支援するため、診療所や病院を運営する医療法人を対象に厚生労働省が導入した認定医療法人制度の利用が進まない。所定の手続きを経て認定法人に移行すると、相続などの際に税制面で優遇を受けられる制度だが、正しい認識が広まらないことで医療法人設立時の出資持ち分を手放すことへの不安感が根強いという。関係者は「制度自体の周知不足も一因」と指摘する。

医療法人の担当者に持ち分なし医療法人への移行について説明する河合吾郎代表(右)=浜松市浜北区の浜北病院
医療法人の担当者に持ち分なし医療法人への移行について説明する河合吾郎代表(右)=浜松市浜北区の浜北病院

 「医療法人の永続性を確保するには、持ち分なし法人に移行し、出資者への払い戻しや相続税などのリスクを避けることが重要」。6月、浜松市浜北区の浜北病院で、河合医療福祉法務事務所(同市北区)の河合吾郎代表が担当者に説明した。
 従来の「出資持ち分あり医療法人」は、医療法人の設立者が設立時の出資額に応じて払い戻しを受ける権利を持つ。例えば2人が1億円ずつ出資して設立した法人の資産がその後に10億円まで増えた場合、出資者は2分の1に当たる5億円の払い戻しを受けられる。
 一方、親族などに医療法人の経営を譲った場合は相続税が課される。課税対象資産は施設など現金以外も含まれるため、相続する人の状況によっては法人の廃業につながる恐れもある。こうしたリスクを回避し、地域の医療を守る目的で、2014年に認定医療法人制度が始まった。
 当初は17年までの期限付きだったが利用が進まず、20年まで延長された。だが、「財産権放棄への抵抗感は根強い」(同省担当者)のが実情で、移行に伴う贈与税の非課税要件を大幅緩和するなどしたが、移行は全国で約530件にとどまっている。同制度は今年5月に公布された改正医療法で、23年9月までの再延長が決まった。
 代替わりを見据え、持ち分なしへの移行を検討し始めた浜北病院理事長の竹内伸一医師は「経営は素人。税負担や財産権を放棄するメリットについて、正しい理解が医療法人経営者の間に浸透していないのでは」と話す。
 
 ■安定経営へ移行検討を
 持ち分なし医療法人への移行について周知を続ける河合医療福祉法務事務所(浜松市北区)の河合吾郎代表は認定医療法人制度の再延長を受け、「地域医療の持続のために重要な制度と考える。安定的な法人経営を確保するために、持ち分なしへの移行を検討してほしい」と訴える。
 持ち分ありのままだと、出資者への払戻金だけでなく、法人への課税が高額になるケースが多い。法人資産は現金以外の資産も含まれることから、医療法人代表の突然の死去などで高額な支出を強いられ、経営持続が困難になる可能性がある。
 河合代表は「制度の周知が進まなければ、地域医療にとって大きなリスクとなり得る」と強調する。
 
 認定医療法人制度 持ち分あり医療法人から持ち分なし医療法人への移行を促進し、地域の医療経営の安定化を図るため、2014年に始まった。相続人が出資者の持ち分を相続などで取得した場合、その法人が認定医療法人制度に基づいて持ち分なしへの移行計画の認定を受けていると、移行計画の期間満了までは相続税などが猶予される。持ち分を放棄した場合は猶予税額が免除される。

いい茶0
あなたの静岡新聞 アプリ