家は無事でも帰れない… 立ち入り禁止に被災者苦悩 熱海土石流被災地、工事続き「解除、いつ」

 熱海市伊豆山の土石流で、被災現場の立ち入り禁止区域内には、見た目は無傷で「全壊」や「半壊」とみなされない住宅が残っている。ただ、二次災害を防ぐため所有者でも立ち入ることができないため、避難生活を余儀なくされている。静岡県や市は、こうした長期にわたり帰宅できない住民の救済措置の調整を急いでいる。

立ち入り禁止区域内にある住宅。土石流による損壊を免れたものの、住宅に帰宅できない状況が続いている=4日午後、熱海市伊豆山
立ち入り禁止区域内にある住宅。土石流による損壊を免れたものの、住宅に帰宅できない状況が続いている=4日午後、熱海市伊豆山

 立ち入り禁止区域内に家がある小磯栄一さん(73)、洋子さん(71)夫妻は、近所のアパートで暮らしていた娘の西沢友紀さん(44)を土石流で亡くした。現在は息子と、友紀さんの夫、孫とともに避難所になっている市内のホテルに身を寄せている。
 土石流は自宅のすぐ近くを流れた。着の身着のままで避難した小磯さん夫妻は、自宅の状況が分からないままホテルで過ごした。災害発生から約1カ月後、特別に許可を得て自宅から財布や免許証を持ち帰ることができたという。
 「精神的に疲れた。自宅に帰れるものなら、すぐにでも帰りたい」。小磯さんは嘆くが、自宅付近では土砂の撤去作業が続き、逢初川上流部の砂防工事にも長い年月を要する。立ち入り禁止区域の解除がいつになるのか分からない。
 県や市が被災者のために確保している公営住宅や民間賃貸住宅に入居するには、罹災(りさい)証明書に基づく「全壊」「半壊」の判定が必要。小磯さん宅はその基準を満たしていないため、このままでは自力で住まいを探し、家賃も自己負担しなければならないという。
 洋子さんは「娘を亡くした被災者として負った心の傷は深い。孫の世話をしながら、これから家を探すとなると相当のエネルギーが必要。その力が残っているかどうか」と苦しい胸の内を明かす。その上で「一定のルールがあるのは分かるが、被災者の個別事情をくんでほしい」と訴えた。

 ■仮設住宅、入居対象に 静岡県調整
 静岡県は4日、熱海市で発生した土石流の被災者に対する仮設住宅の提供で、立ち入り禁止区域内に住宅があるなどの理由で長期間自宅に戻れない世帯を、災害救助法上の入居対象に加える方向で内閣府と協議していると明らかにした。8月中旬に予定している公営住宅の第2回入居募集に向け調整中という。
 住宅の損壊がなくても帰宅できない世帯の事情を踏まえ、対象区域などを内閣府と協議している。星野浩二建築住宅局長は「仮設住宅への入居は緊急の課題。第2回の募集に間に合うようにしたい」と説明した。
 県と市は7月30日から8月4日まで、罹災(りさい)証明書で全壊や半壊と判定され、自宅に居住できない被災者を対象に公営住宅の入居募集を行った。3日時点の申し込みは12件。このほか、一定の条件を満たす民間賃貸住宅の借り上げは随時受け付け、同日までに21件の申請があった。

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