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特集 : 大自在

大自在(8月5日) 読書感想文

 「何でまた興味を持ったんですか」と聞かれると、「何でまたサル学に興味がないんですか」と、ノンフィクション作家立花隆さんは問い返した。何をもって「人間的」かなど、サルを知ることはヒトを知ることだからと。
 本欄の担当になってから、読書感想文全国コンクールの課題図書を読んでいる。今年は「オランウータンに会いたい」(小学校高学年)を選んだ。立花さんの「何でまた」が頭をよぎったからでもある。
 著者の久世濃子さんは20年近く、東南アジア・ボルネオ島のオランウータンを研究している。オランウータンは霊長類ヒト科に分類され、ヒトより早くアジアにすみついたが、開発や密猟で絶滅の危機にある。
 研究者へ背中を押してくれた指導教授のひと言や、樹上でくらす地球上最大の動物を調査する難しさなど、感想文の着眼点はたくさんある。同じヒト科でも、ゴリラ、チンパンジー、ヒトとは繁殖の形態や子育てが随分違う。オランウータンは母親が赤ちゃんを連れ歩く以外、雄も雌も単独で生活する。
 父親の役割は繁殖で、子育てには一切かかわらない。雌は15歳くらいで最初の子を産み、その後は平均7年に1回、1頭の子を産む。〝ひとり〟で大切に育てる「孤育て」。下の子が生まれると上の子はひとり立ちする。その時の母子の思いを想像したら、人間にも重なって胸を打つものがあった。
 直立二足歩行と体重に対して大きな脳が特徴のホモ・サピエンスは今、スポーツの祭典を日本で開いている。「多様性と調和」は全ての生命に広げて考えたい。

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