精子の高精度観察に成功 不妊治療への活用期待 浜松医科大研究チーム

 浜松医科大の生殖周産期医学講座の宗修平特任助教と、浜松医科大発のベンチャー企業「NanoSuit(ナノスーツ)」の共同研究チームが、生きた状態の精子を電子顕微鏡で観察することに成功した。精子表面の構造を細かく知ることができるようになり、不妊治療への活用が期待される。研究は6月、アンドロロジー(男性学、雄性学)学会賞を受賞した。
 電子顕微鏡による観察は試料が真空状態に置かれるため、乾燥などの前処理段階で試料がダメージを受ける。宗特任助教は、同大などが開発した電子顕微鏡で生きたまま細胞を観察する「ナノスーツ技術」を応用した。
 ナノスーツ法では、精子に電子線を当て、水分が出ないように保たれる膜(ナノスーツ膜)を形成する。これによって、真空下でも生きた状態のまま観察できるという。従来の観察法で1日かかっていた前処理が不要で、数分の準備で、より鮮明に観察できる簡便性と、細胞表面の情報が維持されているため、より高度な解析を可能にした点が高い評価を受けた。
 今後はナノスーツ法を用いて精子の形態の違いと受精能の関係解明を目指すという。宗特任助教は「新しい不妊治療に生かせる技術開発が目的だった。子どもを望む人の役に立ちたい」と強調する。
 (浜松総局・土屋咲花)
 男性専門医師少なく
 世界保健機関(WHO)によると、不妊の約半数は男性に原因があるとされる。男性不妊症の評価基準には精液量や精子の運動率、濃度、正常形態率などがあるが、電子顕微鏡を使った微細な精子の表面構造は評価が困難とされてきた。静岡医療科学専門大学校の金山尚裕大学校長によると、男性不妊は増えている一方、専門の医師は少なく、「圧倒的に研究は遅れている」という。
 国立社会保障・人口問題研究所の調査(2015年)によると、夫婦の約5.5組に1組が不妊の検査や治療を受けた経験があるとされ、過去の調査と比較して増加傾向にある。厚生労働省は22年度から、高度不妊治療である体外受精や顕微授精を保険適用とする方針を示している。

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