山梨県 県道建設に活用 観光振興に光、町民期待【大井川とリニア 県外残土の現場から㊥】

 リニア中央新幹線南アルプストンネル山梨工区の工事が進む山梨県早川町。7月中旬、「ダンプ街道」と呼ばれる県道を北上すると、何台ものダンプカーとすれ違った。「中央新幹線」と書かれた表示を車体の前後に掲げ、リニア工事の残土を町内各地の置き場に運び込んだ。

リニアの残土置き場を出入りするダンプカー。1日に約400台が町の幹線道路を行き交う=7月中旬、山梨県早川町(画像の一部を加工しています)
リニアの残土置き場を出入りするダンプカー。1日に約400台が町の幹線道路を行き交う=7月中旬、山梨県早川町(画像の一部を加工しています)
リニア中央新幹線のルート
リニア中央新幹線のルート
リニアの残土置き場を出入りするダンプカー。1日に約400台が町の幹線道路を行き交う=7月中旬、山梨県早川町(画像の一部を加工しています)
リニア中央新幹線のルート

 7月時点で町内を行き交うダンプは1日当たり約400台。JR東海が工事最盛期に見込む465台に迫る。町内のリニア工事で発生する残土は約330万立方メートルで、町内1カ所の本置き場と9カ所の仮置き場に置かれる。地元の町立早川北小付近の県道沿いは、高さ5メートルほどに積まれた残土の置き場が集中して並び、ダンプの往来が特に多い。
 同小付近の地元農産物販売店を手伝う若林寿明さん(45)は豊かな自然が気に入り、地域おこし協力隊として4月に着任したばかり。「自然の中に突如、人工物が現れるのは少し違和感がある」と残念がる。同小近くで生まれ育った男性(69)も「町を訪れる観光客から、残土の山で景色が楽しめないと聞くようになった」とこぼす。ただ、「まちの将来のために仕方がない」と複雑な表情を浮かべた。
 かつては金山や林業で栄えた早川町。ピーク時には1万1千人ほどいた人口が現在は千人を切り、全国で人口最少の「町」。町内に点在する温泉や自然体験プログラムなどの観光業が町の経済を支える。
 1300年の歴史を誇る旅館「慶雲館」の53代目当主で町観光協会長の川野健治郎さん(62)は「かつてはリニアに反対していた」と語る。考えが変わってきたのは、工事で発生する残土のうち120万立方メートルが、町北部から甲府市方面につながる県道「早川芦安連絡道路」の整備に使われることが決まってから。「連絡道路が開通すれば周遊観光が可能になる」と町の振興に期待を寄せる。
 連絡道路の整備は町が長年、山梨県に予算要望を続けてきたが、かなわなかった。事業費の3分の1に相当する67億円をJRが負担し、2017年度に着工にこぎ着けた。町総務課のリニア担当者は「災害時の孤立も防ぐ」と力説する。
 自然体験プログラムなどを提供する町営施設「ヘルシー美里」の大西信正所長(56)は「自然体験を提供しているので残土があるのは景観面でマイナス」としつつ、「マイナスのままではなく、プラスに転換できるまちづくりにJRにも加わってもらいたい」と前向きに捉えている。
 (「大井川とリニア」取材班)

 <メモ>JR東海によると、大井川上流部の燕沢(つばくろさわ)付近に置く静岡工区の残土は盛り土の高さが65メートルとなり、静岡県林地開発許可審査基準に従って高さ5メートルごとに段を設けて階段状に積む。排水施設の降雨強度は県有識者会議の指摘を踏まえ、県基準「10年に1度の確率で発生する大雨」に耐えうる強度よりも厳しく設計するという。県は「安定性や安全面の検討は十分ではなく、今後も議論が必要」としている。残土は主にダンプカーでの運搬を想定している。

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