「詰め所」奪われても町守る 熱海で被災の消防分団 “救出”の看板、団旗に誓い
3日に熱海市伊豆山で発生した大規模土石流は、地元住民で構成する市消防団第4分団の詰め所も飲み込んだ。発生直後から住民の避難誘導に奔走した団員やOBは、今も一部が避難生活を送りながら捜索活動の後方支援を続ける。15日には土砂にまみれた看板や団旗を“救出”。詰め所から約300メートル先の店舗軒先に構えた仮の活動拠点に掲げている。
土砂が勢いよく流れた地点にある詰め所は鉄筋コンクリート造3階建て。土砂の撤去が進んだことを受け、同分団所属で団本部部長の松広富成さん(51)らが被災後初めて詰め所の前に立つと、消防ポンプ車が止まっていた高さ約3・5メートルある1階の車庫は天井部分まで土砂で覆われていた。取り出した看板は傷だらけで石がめり込み、土石流の激しさを物語る。棚の上に保管していた団旗は土砂の上に落ちた状態で、窓から持ち出すことができた。
発生当日は、一報が通話アプリ「LINE」のグループ内で伝わった。団員は詰め所に向かったり、住民に避難を呼び掛けたりする中で第2、第3の土砂が襲った。詰め所近くの自宅を出て、避難誘導をしていた団員の高橋裕気さん(41)は「『ガタガタ』という大きな音と合わせて電柱がぐらぐら揺れる様子に恐怖を覚えた」と振り返る。
分団は捜索現場を挟む形で2カ所に分かれ、交代しながら、交通整理や被災者が自宅に戻る際の付き添いなどを続けている。松広さんは「団員をもう少し休ませたい」と気遣いつつ、「地元を守らなければという使命感がある。今後、仮設の詰め所ができればありがたい」と話した。