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復旧と経済 熱海観光、葛藤の夏 関係者「今できることを」

 熱海市伊豆山の大規模土石流は、まちの経済を支える観光に大きな影を落としている。被災地域は限定的だが、交通網の復旧に見通しが立たない状態が続く。コロナ禍に輪を掛けた自粛ムードが広がり、観光関係者は「不明者の捜索や生活の復旧が最優先だが、経済を少しでも動かさないとまち全体が止まってしまう」と複雑な思いを吐露する。

土石流の影響で流木などが漂着し、遊泳禁止になっている熱海サンビーチ。海水浴客の姿は少ない=18日午後、熱海市
土石流の影響で流木などが漂着し、遊泳禁止になっている熱海サンビーチ。海水浴客の姿は少ない=18日午後、熱海市

 東海地方の梅雨明けから一夜明けた18日、同市の熱海サンビーチ。海水浴客の姿がまばらな砂浜には「遊泳禁止」の看板があった。土石流による流木などが漂着するためだという。
 市はもともと、市内3海水浴場(サンビーチ、長浜、網代温泉)の海開きを17日に予定していたが、土石流発生を受け中止に。来訪は「自己責任」とし、水難事故や迷惑行為を防ぐために監視員を配置している。
 波打ち際で長男と水遊びをしていた東京都練馬区の会社員男性(36)は「遊びに来るのは不謹慎と思う半面、自粛が被災地にとっていいことなのか悩んだ」と打ち明けた。
 迎える側の気持ちも複雑だ。市観光協会の稲村誠事務局長は「積極的に誘客しにくい状況ではあるが、熱海全体が苦境に耐えるために、今はできることをやる」と語る。市南部の多賀観光協会の長津義信専務理事は「観光で生み出したお金を災害支援に充てたい」と強調する。
 大動脈の国道135号復旧の見通しがたたず、捜索は道半ば。被災者の避難生活も長期化している。斉藤栄市長は「観光関係者の中には、普段通りに営業していいかどうか悩んでいる人も多い」と代弁する。さらに、「市も大部分のエネルギーを災害対応に充てているが、観光客を精いっぱいお迎えしたい」と基幹産業の持続に対する思いを語った。

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