全量戻し「県外流出分」除外? JR東海社長発言、波紋広げる 利水者「誠意ある対応を」【大井川とリニア】

 リニア中央新幹線工事に伴う大井川の流量減少問題で、JR東海が静岡県や利水者の求めに応じて表明していた「トンネル湧水の全量戻し」について、金子慎社長が「県外流出とは違った問題」とした発言が波紋を広げている。利水者は工事中に湧水が県外に流出して流域の水資源が減ることを強く危惧しているが、発言は利水者にとって県外流出分が「全量戻し」の対象外と受け取れる内容。県側は「JRとの対話が成り立たない」(県幹部)と懸念している。

トンネル湧水全量戻しの意味について説明するJR東海の金子慎社長=6月17日、東京都内
トンネル湧水全量戻しの意味について説明するJR東海の金子慎社長=6月17日、東京都内
「トンネル湧水の全量戻し」を巡る静岡県とJR東海のやりとり
「トンネル湧水の全量戻し」を巡る静岡県とJR東海のやりとり
トンネル湧水全量戻しの意味について説明するJR東海の金子慎社長=6月17日、東京都内
「トンネル湧水の全量戻し」を巡る静岡県とJR東海のやりとり

 「使い方によって、あるいは使う人や時点によって違う」―。6月17日の記者会見で「全量戻し」の意味を説明した金子社長。1年前の川勝平太知事とのトップ会談では「(戻せないのは)考えにくい。乗り越えられる技術はある」と全量戻しの実現に自信を示していたが、記者会見で技術は何なのか明確にせず、全量戻しの解釈について「私が知事との間で言ったのは、工事期間中の県外流出とは違った問題」と強調した。
 全量戻しを巡っては県が2014年の環境影響評価の手続きで、県内区間に発生した湧水を工事中と供用後に全て戻すようJRに要請し、金子社長が18年に全量戻しを表明した経緯がある。
 農家に水を供給する大井川右岸土地改良区の浅羽睦巳事務局長は今回の社長発言について「責任逃れのように感じる。極力流出させないという姿勢がJRにない。信頼関係が大事なのに」と困惑する。川勝知事は「議論のすり替えも甚だしい」と反発している。
 トンネル湧水は水を含んだ地中を掘削する際に大量に出るとされ、JRは掘削時にトンネル先端が水没する可能性を何度も説明してきた。南アルプストンネルは山梨、長野県から掘り進めると静岡県内の湧水は勾配で他県に流れ出て、その量は山梨側だけで小学校プール約1万個分とされる。ある利水関係者は「国も含めて誠意ある対応をお願いしたい」と注文を付けた。
   
 ■困らないようにするという趣旨
 JR東海広報担当者の話 (昨年6月のトップ会談で)川勝平太知事から全量を戻せない場合の対応を問われた際、金子慎社長は「最終的には大井川の水を使っている方々が困らないようにする」と発言しており、今年6月17日の会見も同様の趣旨。工事期間中に全量戻しができるかどうかの点については発言していない。
 
 <メモ>県が「トンネル湧水全量戻し」を求める理由 JR東海は当初、表流水の減少分を測定して同じ量の湧水を戻すとしていたが、降雨量は毎年異なり、表流水量が前年より減ってもリニア工事の影響だと特定できない。県は山岳部の川の形状が豪雨などで常に変化し、表流水量の正確な計測は困難とする。影響を回避するには流域外に水を出さない「湧水の全量戻し」が最低限必要だと主張している。
 

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