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特集 : こち女

男性の育休取得 普及の鍵は 法改正で取りやすく【こち女】

 男性の育児休業取得や育児参加を促す改正育児・介護休業法が6月に成立した。男性の育休取得の普及により、女性の産後うつ予防や心身の負担軽減が期待される。国は2019年度に7.48%だった男性の育休取得率を25年に30%まで引き上げる目標を掲げる。静岡県内企業や識者を訪ね、今後、どのような取り組みが鍵となるか探った。

次女の誕生に合わせ育休を取得した犬塚恵衣さん。必要に応じてテレワークなどに取り組んだ(本人提供)
次女の誕生に合わせ育休を取得した犬塚恵衣さん。必要に応じてテレワークなどに取り組んだ(本人提供)
育休の取得経験や独自の休暇制度について話す堀本海さん(左)や村松幸子さん(中央)=6月上旬、富士宮市の日本プラスト
育休の取得経験や独自の休暇制度について話す堀本海さん(左)や村松幸子さん(中央)=6月上旬、富士宮市の日本プラスト
犬塚協太教授
犬塚協太教授
改正育児・介護休業法ポイント
改正育児・介護休業法ポイント
次女の誕生に合わせ育休を取得した犬塚恵衣さん。必要に応じてテレワークなどに取り組んだ(本人提供)
育休の取得経験や独自の休暇制度について話す堀本海さん(左)や村松幸子さん(中央)=6月上旬、富士宮市の日本プラスト
犬塚協太教授
改正育児・介護休業法ポイント

 (大滝麻衣)
 ■業務見直し、改善の機会に 空き家買取専科(静岡市駿河区)
 空き家の買い取りと再販を手掛ける「空き家買取専科」(静岡市駿河区、従業員9人)ではこれまでに、子育て中の男性社員4人全員が育児休業を取得した。育休を「業務の見直しや改善を図る機会」と捉え、会社や社員の成長につなげている。
 営業担当の犬塚恵衣[けい]さん(33)は2020年9月の次女誕生に合わせ、育休を1カ月半取得した。長女(3)が誕生した時には以前の勤め先で残業に追われ、ほとんど育児に関われなかったが、今回は「家事、育児全般で“戦力”になれた」という。
 育休に入る前、これまで訪問中心だった営業方法を見直し、電話やメールによる効果的な営業活動ができないか検討した。現行の育休制度では、育休中も「一時的・臨時的」な業務に限り、月10日以下または月80時間以下であれば働くことが可能。犬塚さんは必要に応じて、テレワークで営業業務を行ったり、ミーティングに参加したりした。
 店長の黒田淳将さん(34)は「営業方法の見直しで、移動時間や作業量をカットできた。育休明けからは、新たにできた時間に、違う仕事に挑戦してもらうこともできた」と犬塚さんの育休取得による効果を強調する。黒田さん自身も育休を2回取得した際、リモートでマネジメントができる態勢を事前に整えるなどした。
 同社では以前から社内レクリエーションに社員の家族も参加するなど、家族間での交流を深めてきた。黒田さんは「自然と“お互いさま”の意識が生まれ、男性の育休取得も当たり前という風土になっている」と胸を張った。

 ■独自休暇で育児を後押し 日本プラスト(富士宮市)
 富士宮市に本社を置く自動車部品メーカー「日本プラスト」(従業員1321人)は、育児休業とは別に独自の育児休暇制度を設けて男性社員の子育て参加を促すなど、男女問わず活躍できる職場作りに取り組む。「優秀な人材を確保するため不可欠」として、男性の育児休業取得率の向上も目指す。
 同社は2019年、利用しきれず消滅するケースが多かった傷病積立有給休暇を、2歳未満の育児を目的に1日単位で取得できるようにした。以前から男性社員の育児休業取得の推進を掲げていたが「長期で取るイメージがあるのか、取得が進まなかった」と人財開発課長の村松幸子さんは振り返る。そのため、1日からでも気軽に育児目的で休める制度を導入した。
 村松さんは「子育て中の女性の活躍には夫の協力が必要。社内には夫婦で働く社員も多く、男女問わず仕事と家庭のバランスを取ってほしい」と強調する。育児休暇の利用実績は男性社員が半数を上回り、子どもの看病や保育参観、予防接種に活用されている。
 一方の育児休業は、男性2人が取得した。第1号の堀本海さん(35)は長男(3)誕生後、2カ月の育休を取得。家事全般と、妻と数時間交代で仮眠を取りながら、授乳を担当した。「妻は産後、高熱が出たり、腰痛がひどかったりした。育休を取ってよかった」と振り返る。
 村松さんは「採用活動で、男子学生から育児休業取得が可能か質問を受ける機会が増えてきた」とした上で、「本社だけでなく工場を含めた全部署で、男女ともに子育てしながら働ける環境を整えたい」と意気込む。

 ■意向確認の効果に期待 改正育児・介護休業法 県立大・犬塚協太教授に聞く
 育児・介護休業法の改正を契機に、男性の育休取得は進むのか―。静岡県立大の犬塚協太教授(家族社会学)に改正法の意義や今後の課題を聞いた。
       ◇
 今回最も評価したいのは、企業に対して子どもが生まれる従業員一人一人への育休取得の意向確認が義務付けられたこと。育休の取得経験のない経営者層や管理職の意識変革に大きく寄与する。これまで育休取得の希望を言い出せなかったり、取れると思っていなかったりした男性社員への後押しになり、職場全体の意識も変わる。
 会社選びの条件として、男性社員の育休取得率に注目する学生が増えている。企業は男性の育休取得を、性別を問わず優秀な人材を確保し、定着させるための経営戦略と位置付けるべき。男性の育休取得を進めれば、「属人化」している業務の見直しなど、職場改善のきっかけにもなる。
 改正法では従業員1000人超の大企業に社員の育休取得状況の公表が義務付けられた。今後、早い段階で中小企業にまで対象を広げ、義務化していくことを求めたい。
 男性が育休を取るにあたり、家計に大きなダメージがあるという“思い込み”がある。現行の制度でも給付金や社会保険料の免除で賃金の約8割を確保できる。改正法では労使が合意し事前調整した上で、休業中の就業も可能になった。在宅ワークが広がる中で、育休中も柔軟な働き方ができれば、収入減の抑制につながる。
 女性の間には「夫が育休を取っても、家事に不慣れで心配」などの声があるようだ。ただ、専業主婦家庭全盛期の価値観の影響が残る今の子育て世代は、家事の要求水準が高すぎる傾向にある。今は共働きが主流なのに「家事もしっかりしないと」と自分にプレッシャーをかける女性も多い。だが、もっと「手抜き」「時短」でいい。夫への要求水準を下げてみると、妻自身の気持ちも楽になるかもしれない。

いい茶0

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