熱海盛り土 パイピング現象か 大量の地下水噴出 静岡県見解

 熱海市伊豆山の大規模土石流で被害を拡大させたとされる盛り土の崩落原因について、静岡県は記録的な積算雨量に伴って盛り土内にたまった大量の地下水が下端部から噴き出した「パイピング現象」との見方を強めている。排水施設などで崩壊の防止策が講じられていなかった可能性が高いとする一方で、推定される発生メカニズムを踏まえると、同規模のパイピング現象が再び起きる恐れは小さいとみている。原因究明に取り組む難波喬司副知事は14日の記者会見で「大崩落が起きる状態ではない」と説明した。

盛り土下端のパイピング現象が始まる 上部の盛り土への連鎖的崩壊が進み、盛り土部分のほとんどが崩落する
盛り土下端のパイピング現象が始まる 上部の盛り土への連鎖的崩壊が進み、盛り土部分のほとんどが崩落する
がれきや土砂を撤去しながら捜索活動を続ける自衛隊員=14日午後、熱海市伊豆山
がれきや土砂を撤去しながら捜索活動を続ける自衛隊員=14日午後、熱海市伊豆山
土石流発生前3日間の雨量
土石流発生前3日間の雨量
盛り土下端のパイピング現象が始まる 上部の盛り土への連鎖的崩壊が進み、盛り土部分のほとんどが崩落する
がれきや土砂を撤去しながら捜索活動を続ける自衛隊員=14日午後、熱海市伊豆山
土石流発生前3日間の雨量

 県が同市水口町に設置する観測所は、本格的な降り始めの1日午前4時から土石流発生直前の3日午前10時までの積算雨量を449ミリと計測した。県によると、降り始めからの総雨量は過去10年間で最も多かった。伊豆地域にも被害をもたらした2019年10月の台風19号は5日間の積算雨量が274ミリで、今回が記録的な積算雨量だったとする。短時間に大量の雨が降ると地表を流れ下る水が多いが、県は強めの雨が長く続いたことで地下に浸透する水が増え、盛り土内に大量の地下水がたまってダムのようになったとみている。
 流出防止なし?
 土石流の起点とみられる盛り土付近は元々、上流側から水が集まる谷の地形。ところが、県が地形データや書類などを調べると、盛り土の高さは届け出の15メートルを大幅に上回る52メートルまでかさ上げされていた疑いが強まっている。地下水がたまると盛り土下端部に強い土圧や水圧が掛かるが、業者の届け出には流出防止の擁壁は計画されておらず、盛り土内の地下水を抜く排水施設も写真などで確認できていない。不適切な工法で築かれた盛り土内には、長雨による大量の地下水がたまった状態だったとみられる。
 連鎖的に崩壊か
 水圧に耐えられなくなると盛り土の下端から水が勢い良く噴き出すパイピング現象が発生する。大量の水を含んだ盛り土下部が泥流となって流れ下り、盛り土上部も安定性を失って連鎖的に大規模な崩壊に発展したとみられる。県は地形データの分析で流れ下った土砂量は約5万5500立方メートルと推定し、大半は盛り土とみている。起点付近に残された盛り土量は約2万立方メートルと推定する。
 県は今後、土砂の固さや粒子の大きさを調べる成分分析や地質を調べるボーリングを通して発生メカニズムの裏付けを進める。
 パイピング現象 地下水が土の中に浸透して地下水位が高くなると、高低差によって盛り土の下部に掛かる水圧が大きくなる。耐えきれなくなると、水と土砂が強い勢いで噴き出す。その際に付近の地盤をえぐることもあり、今回の土石流では盛り土の下端部が崩れるきっかけになった可能性がある。

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