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道路影響、集水面積6倍か 雨水、分水嶺超え盛り土に 熱海土石流、地質学者・塩坂氏が見解

 熱海市伊豆山の大規模土石流で起点となったとされる逢初(あいぞめ)川上流部の盛り土について、付近に造成された道路から雨水が断続的に流れ込み、大量の水を含んで崩壊に至った可能性があることが9日までに、特別上級技術者(土木学会)で地質学者の塩坂邦雄氏(76)=静岡市葵区=の調査で明らかになった。周辺の開発行為などで、盛り土周辺に向けて雨水が集まる面積は約6倍に広がっていたとみられる。

増えた集水域から大量の水が流れ込み崩壊したと指摘される盛り土=7日、熱海市伊豆山(本社ヘリ「ジェリコ1号」から)
増えた集水域から大量の水が流れ込み崩壊したと指摘される盛り土=7日、熱海市伊豆山(本社ヘリ「ジェリコ1号」から)
塩坂邦雄氏
塩坂邦雄氏
増えた集水域から大量の水が流れ込み崩壊したと指摘される盛り土=7日、熱海市伊豆山(本社ヘリ「ジェリコ1号」から)
塩坂邦雄氏

 塩坂氏によると、崩壊した盛り土の北側は尾根になっており、分水嶺(れい)の役割を果たしている。上流部から伊豆山港付近まで広大な面積を持つ逢初川の集水域のうち、盛り土より上流部分は約4万平方メートルあり、本来はそこに降った雨が盛り土のエリアに流入するという。
 4、6日に塩坂氏は現地調査し、尾根の北側に降った雨が付近に造成されたヘアピンカーブの道路の傾斜に沿って、盛り土のある南側に流れ込んでいたとみられる痕跡を2カ所で確認した。塩坂氏のシミュレーションによると、雨量が一定以上となった際は尾根を超えて南側に水が流入するとみられ、集水域は計約25万平方メートルになるという。
 今回の土石流をめぐっては複数の専門家が「盛り土を含めた周辺の開発行為に伴う複合的要因で引き起こされた」と推定している。法令では、宅地造成に伴い従来の分水嶺や水路などの変更をするときは、下流で災害が発生しないよう排水施設の設置などが義務付けられている。
 塩坂氏は「本来の集水面積から、これほどの大災害になるのか疑問があった」とした上で「結果的に分水嶺を超えて造成が行われており、人為的な河川争奪(河川の流域の一部分を別の川が奪うこと)が起こった」と述べ、法令で規定された対策が不十分だった可能性を指摘した。

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