土砂急襲「まさか」 地元住民ぼうぜん 熱海土石流災害

 自然の猛威になすすべもなく立ちすくんだ地元住民-。記録的な大雨が3日、熱海市に未曽有の土石流をもたらした。大量の土砂が民家や車を押し流し、女性2人が心肺停止の状態で発見、死亡した。静岡県によると、約20人の安否が分かっていない。沼津市でも家屋が川に流失するなど、各地で被害が発生した。県内は4日以降も雨が予想され、緊迫した状況が続く。

熱海市伊豆山で発生した土砂崩れ。家屋や車などが土石流にのみ込まれた=3日午後0時半ごろ
熱海市伊豆山で発生した土砂崩れ。家屋や車などが土石流にのみ込まれた=3日午後0時半ごろ
警察の安否確認に手で丸を出して応じる土石流現場付近の住民(奥上)=3日午後3時59分、熱海市伊豆山
警察の安否確認に手で丸を出して応じる土石流現場付近の住民(奥上)=3日午後3時59分、熱海市伊豆山
復旧作業が進む土石流現場=3日午後7時45分、熱海市伊豆山
復旧作業が進む土石流現場=3日午後7時45分、熱海市伊豆山
熱海市伊豆山で発生した土砂崩れ。家屋や車などが土石流にのみ込まれた=3日午後0時半ごろ
警察の安否確認に手で丸を出して応じる土石流現場付近の住民(奥上)=3日午後3時59分、熱海市伊豆山
復旧作業が進む土石流現場=3日午後7時45分、熱海市伊豆山

 ゴゴゴォーという地響きが聞こえた次の瞬間、おびただしい土砂が民家をなぎ倒し、車を飲み込んだ。3日午前10時半ごろ、熱海市伊豆山で発生した大規模な土石流が伊豆東海岸の閑静な温泉街を襲った。大勢の住民が巻き込まれ行方が分かっていない。「まさかこんなことになるなんて…」。難を逃れた人たちもぼうぜんと立ち尽くした。
 「逃げて!」。身の危険を感じた住民はそう叫びながら、着の身着のままで避難した。恐怖におびえる子供の声も響いた。国道135号に架かる逢初(あいぞめ)橋付近では、住宅を巻き込んだ土砂が橋を覆い尽くした。倒壊を免れた木造住宅も傾き、ベランダや窓から土砂があふれ出た状態。周辺の道路からは茶色い濁流が勢いよく逢初川に流れ込み、物々しい雰囲気を増長させていた。
 「夜中からゴロゴロと大きな石が流れてくる音が聞こえていた。嫌な予感がした」―。逢初橋の向かいに住む湯原栄司さん(75)が被害の状況を確認するため外に出た瞬間、土石流の第2波、第3波が次々と発生した。住宅の柱や屋根を破壊するけたたましい音とともに、がれきを巻き込んだ大量の土砂が押し寄せた。突然の出来事に、ただただ逃げるしかなかった。
 逢初橋の近くに住む和田盛治さん(82)も自宅がのみ込まれたという。「近所の人に土石流と聞いて不安になり、外の様子を見ていた。このままでは危ないと思って避難を始めたら、うちの前にも土砂が流れてきた。あのまま家にいたらどうなっていたか…」と表情をこわばらせた。自宅が流された別の男性(72)も「家族がずっと守ってきた家。悔しい」と声を絞り出した。被害現場を訪れた難波喬司副知事は二次災害の危険に触れた上で「人命が一番大事。一刻も早く救出したい」と話した。

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