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川勝氏「県民党」前面に 野党勢、存在感示せず【検証 静岡県知事選㊤】

 20日に投開票された静岡県知事選は、無所属現職の川勝平太氏(72)が無所属新人の前参院議員岩井茂樹氏(53)=自民推薦=を大差で破り、4選を果たした。両陣営の戦いぶりを検証するとともに、次期衆院選、参院補選への影響を探った。

連合静岡を訪ね「県民党」をアピールした川勝平太氏(中央)。選挙期間中、野党勢力の存在感は薄れた=16日、静岡市駿河区
連合静岡を訪ね「県民党」をアピールした川勝平太氏(中央)。選挙期間中、野党勢力の存在感は薄れた=16日、静岡市駿河区

 選挙戦が終盤に入った16日、連合静岡の執行委員会に、たすき姿の川勝平太氏が現れた。「県民の県民による県民のための政治をやる。最後まで(支援を)お願いします」。会合の冒頭、手短にあいさつし、足早に次の遊説に向かった。
 20万人の組合員を有する連合静岡は、12年前の初当選時から川勝氏の選挙戦を下支えする最大の支援団体。ただ今回は、同氏の日頃の言動や一部首長との確執に組織内で異論が噴出し、全会一致の推薦に至らなかった。「(川勝氏が)天狗(てんぐ)になり、言動や確執に拍車がかからないか心配だ」。当選決定直後の20日夜、快勝の結果にもかかわらず、連合静岡の幹部は表情を曇らせた。
 敵に相対するかのように先方を批判し、論破を試みるのが川勝氏の真骨頂だ。その政治手法は時に県民の喝采を浴び、さまざまなあつれきも生んできた。
 今回の選挙戦でも“川勝流”は発揮された。リニア中央新幹線工事に伴う大井川の水問題。川勝氏は科学的根拠に基づいた対話を公約に掲げる半面、街頭演説では国やJR東海を激しい言葉で非難した。相手候補を推薦した自民勢力を「組織力、権力、金力で武装した猛獣」と表現。自身はそれに立ち向かう子(ね)年の“ヒーロー”と支持を訴えた。
 投票箱のふたを開けてみれば、川勝氏の得票数は95万票余り。陣営が告示前に立てた目標の83万票を大きく上回った。投票率も52・93%と前回選から6・49ポイント上昇した。
 立憲民主、国民民主両党県連の関係者が陣営に入り、共産党県委員会は「自主的支援」とした。選対本部は無所属議員を主体とする県議会会派ふじのくに県民クラブが運営し、政党色を消す「県民党」を前面に出した。
 「川勝応援団の先生方が応援に来てくれました」。選挙期間中、川勝氏の遊説先で司会者が応援弁士の政党名を紹介することはなかった。マイクを握った衆院選立候補予定者の一人は政党名を名乗ることを度々封じられ、「さすがに、かちんときた」と振り返る。
 大勝した知事選で、野党各党は政党の存在感を示せないまま衆院選、参院補選を迎える。「川勝氏勝利は追い風」(立民県連幹部)と期待する声の一方、「どの選挙も結局、個の力だ」(国民県連幹部)との冷静な見方も。自民1強に対抗する野党勢力の結集は一向に進んでいない。

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