コロナ禍、廃業危機増 事業承継の支援充実を【静岡県知事選 経済再生への選択④完】

 全国有数のウナギ産地として知られる浜松市。同市中区の老舗店「うなぎの佳川」を営んでいた八木田尚通さん(58)は昨年7月、同じ区内の飲食業「イノベーション&ディベロップメント」(藤田聡明社長)に事業を譲渡した。1976年の創業以来、家族経営で店を守ってきた八木田さんは「愛着ある店を手放すのは寂しいが、ほっとした」と安堵(あんど)の表情を浮かべた。

事業承継の経緯を振り返る八木田尚通さん(右)と藤田聡明社長(左)=11日、浜松市中区の「うなぎの佳川」
事業承継の経緯を振り返る八木田尚通さん(右)と藤田聡明社長(左)=11日、浜松市中区の「うなぎの佳川」

 浜名湖産ウナギを溶岩で焼き上げる地元では知らない人のいない人気店。ただ、既に別の仕事に就く3人の子に後を継ぐ意思はなく、コロナ禍による休業要請や顧客の減少など先行き不安が重なり廃業を検討していた。「20人超の従業員の生活がかかっている。このまま廃業してしまってもいいのか本気で悩んでいた」と八木田さん。
 東京商工リサーチによると、2020年に県内で休廃業・解散した企業は前年比32・3%増の1347件で、調査開始以降で過去最多を更新した。
 公的な事業承継の支援機関、県事業承継・引継ぎ支援センターの清水至亮統括責任者(61)は「後継者不在の中で、コロナ禍で休廃業を決断する人が多い」と分析。“廃業予備軍”は今後も増え続けるとみる。
 八木田さんは取引金融機関の清水銀行と同センターのサポートを受けて、イノベーション社への承継に無事つなげることができた。協議を重ね、雇用と屋号の継続が決め手となったという。
 事業を受け継いだ藤田社長(44)は「私たちにとっては事業の多角化による成長のチャンス。大切な地域の味、伝統を守っていきたい」と思いを強くする。八木田さんは「初めての経験で分からないことだらけだった。基本的なことや資金調達など専門知識について、もっと誰もが気軽に相談できるような中小企業目線の支援を」と行政に注文した。(知事選取材班)

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