苦節1年 悲願の公演 SPAC「忠臣蔵2021」

 静岡県舞台芸術センター(SPAC)が静岡市駿河区の舞台芸術公園で上演した野外劇「忠臣蔵2021」。2020年に予定していた公演は、新型コロナウイルス禍を受けて無期限延期になっていた。SPAC俳優と公募の県民ら約50人の「SPAC47」は、四十七士さながらに1年の苦節を経て悲願の日を迎えた。

「忠臣蔵2021」より((c)猪熊康夫)
「忠臣蔵2021」より((c)猪熊康夫)
「時代を経てさまざまな演出で演じてもらえることは劇作家の喜び」と語る平田オリザ=静岡市駿河区の舞台芸術公園
「時代を経てさまざまな演出で演じてもらえることは劇作家の喜び」と語る平田オリザ=静岡市駿河区の舞台芸術公園
「忠臣蔵2021」より((c)猪熊康夫)
「時代を経てさまざまな演出で演じてもらえることは劇作家の喜び」と語る平田オリザ=静岡市駿河区の舞台芸術公園

 平田オリザの戯曲は、主君を失った赤穂藩の人々が武士としての対応を決める問答をおかしみを込めて描く。涙を誘う家族との離縁や見せ場の斬り合いなど、劇的な場面は惜しみなく割愛した。
 籠城、討ち入り、開城、仕官―太平の世にどれもぴんとこない侍たちの意見は割れる。武士道を掲げる者があれば、現実派あり日和見派あり。亡君のあだ討ちを決断する大評定の前段を、どこまでも軽い日常会話で進めていく。
 1999年に清水港、2004年に静岡市のグランシップ大ホールで100人の県民が出演した大作の再演。SPAC俳優の寺内亜矢子、牧山祐大が演出し、宮城聰芸術総監督が全体をまとめた。
 過去の実績という財産はあるが、コロナ禍の舞台制作は制約だらけだった。出演者総出の群舞は、俳優の接触を避ける動線づくりに苦慮。野外劇場に響かせる楽器演奏も練習時間は限られた。
 集えど騒がず、を静かに共有する稽古は身分を隠す浪士たちのよう。出演者最高齢の小谷野桂子さん(84)=静岡市葵区=は「舞台を横切るだけでもいいから芝居をしたい、という思いで参加した。意識の高い人たちの創作は、演劇は再開できるというメッセージにもなるのでは」と願う。
 舞台は公演の延期に追い込まれた出演者たちの物語を並行させる新たな演出が加わった。忠臣蔵の設定を借りて演劇人の今を提示し、誰もが結論を知るドラマに新鮮な後味を残す。
 思いもしなかった運命に直面し、初めてわき上がる議論、衝突、対立。平田は「演劇人はこの1年、立ち向かう、立ち向かえないという議論を戯曲の中と同じように繰り返してきた。初演から20年以上を経て、演劇の原点を見る思い」と言葉に実感を込めた。
 (文化生活部・宮城徹)

いい茶0
メールマガジンを受信する >