静岡茶の危機 地産地消推進、担い手確保を【静岡県知事選 経済再生への選択①】

 日当たりのよい山の傾斜と藁科川水系の豊かな水に恵まれた静岡市葵区水見色。二番茶の収穫を間近に控えた茶農家勝山実さん(66)は作業の手を止めて「いつのまにか周囲に耕作放棄地が増えた。茶を収穫する人はめっきり少なくなってしまった」とこぼした。

茶園を眺める勝山実さん(右)。中山間地域の茶業の担い手減少は深刻化している=6月7日午後、静岡市葵区
茶園を眺める勝山実さん(右)。中山間地域の茶業の担い手減少は深刻化している=6月7日午後、静岡市葵区

 40年前に90軒近くあった地区の茶農家は、30軒台まで減少した。傾斜地での防除や施肥など茶園管理は重労働が伴い、60~70代中心の茶業経営は限界が近づいている。収量の減少で「茶だけで食べてはいけない」(勝山さん)状態となり、副業で香花や野菜の栽培、もちなどの加工品製造で家計を支える生産者が増えた。
 勝山さんは「自分が生まれた集落を残したい。行政には、茶業を支えてきた家族農業を守るような方策を考えてほしい」と声を絞り出す。
 農林水産省によると、1980年に約5万7千軒あった県内茶農家は2020年に10分の1に近い約6千経営体に減少した。茶園面積は20年間で4割以上減った。
 茶の生葉を製品の前段階に加工した荒茶の生産量は、00年に本県は3万9400トンと2位の鹿児島県と2倍以上の差があった。昨年はわずか1300トンの差になり、農家の売上高に相当する茶産出額は19年に初めて鹿児島県に首位の座を明け渡した。
 「日本一の茶どころ」の危機に、県は落ち込むリーフ茶全体の需要を底上げしようと、これまでに培った「静岡茶ブランド」を磨くことで活路を模索する。昨年度から、異業種が発想や技術を持ち寄る「オープンイノベーション」の手法を取り入れ、商品開発や需要開拓を進める。
 勝山さんは「需要開拓はありがたいが、他にも大切なことがある」と話す。「静岡茶が生き残るには、担い手確保が欠かせない。地産地消を進め、若い人に興味を持ってもらえるような産業であってほしい」
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 新型コロナウイルスの感染拡大、社会環境の変化で県内産業の土台が揺らいでいる。20日の静岡県知事選投開票を前に、経済再生に期待を寄せる現場の声を聞いた。

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