浜松市の「馬込川水門」着工 レベル2の宅地浸水面積9割減へ

 浜松市中心部を流れ、中田島砂丘(同市南区)付近の河口から遠州灘に注ぐ馬込川。県は懸案だった津波遡上[そじょう]対策として5月から、この河口部に高さ8メートル、幅90メートル規模の水門の整備工事に着手した。水門が完成すれば、防潮堤と合わせた津波対策工事が完了し、第4次地震被害想定の最大津波(レベル2)による同市南部の宅地浸水面積を約9割減少できると試算している。

馬込川水門の完成イメージ(県浜松土木事務所提供)
馬込川水門の完成イメージ(県浜松土木事務所提供)


 水門の総工費は数十億円に上る。両岸に堤防を整備し、遠州灘の防潮堤に接続する。地震発生時には、水門に取り付けた地震計が作動して自動で水門が閉じるため、津波の遡上を防ぐことができるという。
 全長約23キロの馬込川は浜北区から南区の河口部まで市内南北を縦断し、中下流域の中区や東区、南区には住宅地や学校、行政機関、企業が立地していて流域人口は30万人以上。津波が遡上すれば、甚大な被害が予想されるが、水門の完成でレベル2の津波に備えることができる。
 整備を進める県浜松土木事務所は水門本体建設の前段階として、川の河口部の水門設置場所に鉄板を埋め込んで川の一部をせき止める「仮締め切り」工事を5月から始めた。仮締め切りでは、河口部の川幅約240メートルのうち、約150メートルをせき止める。仮締め切り工事は来年2月までを予定し、その後水門本体の建設に入る。完工時期は未定という。
 県の試算では、レベル2の津波発生時、防潮堤のみの場合は宅地の浸水面積は64%減にとどまり、津波は国道1号浜松バイパスを越え住宅地などに浸水する。これに対し、水門を設置した場合は89%まで浸水面積を軽減でき、津波は馬込川河口部や遠州灘海浜公園の周辺にとどまる。さらに深さ2メートル以上の宅地の浸水域は98%減らすことができる。
 水門の整備を巡っては、水門の設置と河口部の堤防かさ上げの2案が検討候補となったが、地元の強い要望で、より安全性の高い水門の整備が2019年に決まった。同市自治会連合会の田口博会長は「防潮堤だけでは津波が馬込川を遡上するのを防げないとの危機感を地元は共有している。行政に対して、地元自治会などが一致して水門整備の意見を伝えることができた」と振り返る。
 一方、仮締め切り工事で川幅が狭くなり大雨などの際に氾濫の危険が高まることから、周辺住民からは水門完成までの間の川の治水状況を懸念する声もある。県は氾濫を防ぐため、川の東側で河道確保のための掘削工事を同時に進める予定。田口会長は「水門が完成するまで数年から十数年はかかるかもしれない。その間の氾濫対策や護岸工事を丁寧に進めてほしい」と話す。
 (浜松総局・吉田直人、松崎支局・土屋祐人)

 ■議論重ね住民理解得る 松崎町・那賀川水門 建設計画が前進
 2011年の東日本大震災を機に県は13年から津波遡上[そじょう]対策が必要な約90カ所の河川を対象に堤防のかさ上げや水門の整備を計画している。地元の理解を得られずに水門の整備が約20年にわたって進展しなかった松崎町では、水門の必要性など、行政と住民が議論を重ねたことで整備計画が前進し始めている。
 同町では1998年に松崎港付近の那賀川河口に水門の建設計画が持ち上がったが、自然破壊や景観悪化を懸念した地元住民の反対に遭い、計画は長らく止まったままだった。
 東日本大震災を契機とした防災意識の高まりを受け、議論が再燃した。2019年には町が事務局となり、建設反対者や地元区長らを交えた協議会が発足。地元への丁寧な説明と議論を続けたことで、地元観光業に配慮した津波対策施設の必要性を盛り込んだ「町津波防災地域づくり推進計画」の策定につながった。
 水門整備を進める県下田土木事務所の担当者は、計画が進まなかった理由として「以前は地元に対する県の説明が不十分だった」と振り返った上で、「反省を生かして協議会では住民の一定の理解を得られたことが、計画が進展した要因」と強調する。

いい茶0
メールマガジンを受信する >