社説(6月11日) ホストタウン事業 「共生」の理念は大切に

 新型コロナウイルス感染の拡大は、自治体が東京五輪・パラリンピックに出場する各国・地域の事前合宿を受け入れ、選手との交流を図る「ホストタウン事業」にも大きな影響を及ぼしている。ホストタウンに登録されている全国528自治体のうち、既に2割以上が主に相手国側の意向で事前合宿や交流イベントを断念した。
 コロナ下での五輪開催に賛否が分かれる中、ホストタウン事業によるムード盛り上げはあまり期待できない。だが、外国人選手や障害のある選手との交流を契機に多文化共生社会を目指すという理念は大切にしたい。
 中でもパラ選手を受け入れる「共生社会ホストタウン」は、合宿実施か中止かにかかわらず、これまでの準備を無駄にしないために、大会後も、共生社会の実現に向けた取り組みを継続させてほしい。
 静岡県内でも事前合宿を計画していた16市のうち、8市が中止や縮小を決めている。受け入れる自治体も、コロナ禍前に想定していた選手との近距離での触れ合いは諦めざるを得ない。
 パラ19競技のブラジル選手やスタッフ約400人が合宿する予定の浜松市ではボランティア組織が結成され、市内に暮らす多くのブラジル系住民も母国の選手の来訪を楽しみにしているが、規模の縮小が予想される。子どもたちが競技を体験し、選手と身近に交流するイベントなどは困難だろう。
 誰もが住みやすいまちづくりを目指すユニバーサルデザイン条例を全国に先駆けて制定した浜松市は「先導的共生社会ホストタウン」として国から登録を受けている。リモートでの交流、ビデオや手紙の応援メッセージ、特産品の差し入れなどはコロナ下でもできるのではないか。さらに大会後、活動の成果をどのような形にしていくのか、他の自治体も注目している。
 事前合宿にスペインのパラバドミントン選手を受け入れる予定の静岡市は昨年8月、パラ大会後を見据えて、競技の普及、大会や合宿の実施などに取り組む覚書を日本障がい者バドミントン連盟と交わした。こうした動きが広がることも期待したい。
 東京五輪開幕まで40日余。県内では初の五輪海外選手団となるシンガポールの卓球選手らが27日に来日し、ホストタウンの島田市で事前合宿をスタートさせる。2002年の日韓サッカーワールドカップで親好を深めたカメルーンとキャンプ地となった大分県中津江村(現日田市)の交流は今も続く。コロナ下でも事前合宿を末永い付き合いのきっかけにできるはずだ。

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