寛容に、うそも心地よく 山本起也監督(静岡市出身)新作映画「のさりの島」 自分が感じる世界、信じて

 良いことも悪いこともすべて天からの授かり物―。新型コロナウイルスに翻弄[ほんろう]される今、熊本県天草市に伝わる言葉「のさり」が持つ意味が心に染みる。映画「のさりの島」が7月2日から静岡シネ・ギャラリー(静岡市葵区)で、23日からシネマイーラ(浜松市中区)で公開される。山本起也監督=静岡市出身=は「厳しい時だからこそ、寛容な心を持ち続けたい」と語る。

「『のさり』という言葉に強さと懐の深さを感じた」と話す山本起也監督=静岡市葵区
「『のさり』という言葉に強さと懐の深さを感じた」と話す山本起也監督=静岡市葵区
「のさりの島」より
「のさりの島」より
「『のさり』という言葉に強さと懐の深さを感じた」と話す山本起也監督=静岡市葵区
「のさりの島」より

 ドキュメンタリーを手掛けてきた山本監督が劇映画のテーマに選んだのは、オレオレ詐欺。「人は自分が感じる世界を信じて生きている。たとえ詐欺であっても悪い気がしないという、白か黒かでジャッジできないことがあるのではないか」。本作のプロデューサー小山薫堂の故郷、天草市で構想を伝えると、「その話、ここではあるかもしれない」と住民から言われ、撮影が決まった。
 舞台は同市の寂れた商店街。詐欺を重ねながら放浪する若い男(藤原季節)が高齢の艶子(原知佐子)に孫を装って電話をかけたことがきっかけで、2人の共同生活が始まる。温かい風呂においしい料理。地元の若者との交流も生まれ、男は、艶子の孫“将太”として居場所を見つけていく。
 町の取材を進める中で出会ったのが「のさり」という言葉だ。劇中では一度も出てこないが、映し出される伝統文化やコミュニティー、新進気鋭の藤原や本作が遺作となった原らの演技が、その精神を感じさせる。製作中に実家の雑貨店が商店街から離れることになり、「これも必然なのかと。商店街で生まれ育った者として、その様子をきちんと撮らなければと思った」。
 コロナ禍で公開を1年延期した。「オンライン上映の選択肢もあったが、人が集うことがこんなにも豊かなのだとかみしめてもらう役割も映画にある」と言葉に力を込めた。
 6月20日に静岡シネ・ギャラリーで先行上映会を行う。山本監督が登壇するほか、音楽を担当したピアニスト谷川賢作のミニライブがある。問い合わせは同所<電054(250)0283>へ。
(文化生活部・鈴木明芽)

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