風紋=中田島砂丘の防潮堤 防災と景観の維持 課題

 浜松市南区の中田島砂丘に県と市が整備した防潮堤で、頂上部を保護している砂が強風で飛散し、堤の基礎部分の一部がむきだし状態になっている。県は「ロの字形」のコンクリートブロックや堆砂垣(たいさがき)を設置するなどの対策を講じたが、効果は「未知数」(県担当者)だ。砂が恒久的にとどまる方策を関係機関が地元の協力も得ながら、進める必要がある。
 防潮堤は断面が台形で、土砂やセメントを混ぜた「CSG」と呼ばれる資材を基礎として、その上に砂を30センチの厚さで盛ってCSGを保護している。県浜松土木事務所によると、特に砂丘西側頂上部の砂が北西の強風によって飛散し、砂丘区間の防潮堤の完成から約2年で砂の多くが流出。むき出しになったCSGは風雨に削られ、周辺に散乱した。
 砂丘西側はすでに砂丘内に保管していたストック用の砂約650立方メートルを新たにかぶせる工事を今年の2、3月に行った。約3カ月が経過し、堆砂垣に砂がとどまりやすい場所も分かってきた。夏には砂丘東側にも被覆工事を行う予定だ。
 この工事では、砂が比較的多くとどまっている砂丘東側の保安林などから、飛散して砂が少ない箇所へ砂を移す「サンドリサイクル」を進める。砂丘内で砂を供給し合うこの手法は砂の維持に有効と考えられているが、サンドリサイクルは砂丘の景観を損ねる可能性があり、地域の景勝地である中田島砂丘の景観と防災機能の両立には地元の理解と協力が不可欠だ。
 砂丘を含む遠州灘海岸は海岸浸食が進み、新たな砂の供給が見込めないことを踏まえると、堆砂垣などの対策の検証だけでなく、中長期にわたって砂がとどまる対策も併せてスピード感を持って検証する必要がある。
 「砂丘全体の保護や景観維持を考えることが、防潮堤の防災力を高めることにつながるのではないか」。ある地域住民の言葉だ。こうした視点で住民の命と地域の財産である砂丘を守る有効策を考えてほしい。
 (浜松総局・吉田直人)

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