医師不足 地域偏在の是正が急務【静岡県知事選 “国策”と県政②】

 全国で進む新型コロナウイルスワクチンの高齢者接種。静岡県の6日時点の1回目の進捗(しんちょく)率は都道府県別で44位の17・0%にとどまった。

県内で進む新型コロナワクチンの高齢者接種。“打ち手”の医師は不足している=5月下旬、静岡市葵区
県内で進む新型コロナワクチンの高齢者接種。“打ち手”の医師は不足している=5月下旬、静岡市葵区

 「打ち手が少ないから」と医療関係者が口をそろえる。37・1%で1位の和歌山県は人口比の診療所数も全国一。本県は34位で、医療環境の差が出たという見方だ。病院勤務を含めた医師数全体の水準も本県は低い。
 県は長らく、医師確保を医療政策の柱に据え、推進してきた。県内に一定期間勤務すれば返済を全額免除する奨学金制度「医学修学研修資金」を売りに、10年余りで医師578人を確保した。
 医師の供給を巡り政府は医大新設を原則認めないなど厳しく制限してきた。人材が東京に集中する傾向も根強い。県医師会の小林利彦副会長は構造的な背景を踏まえ、県の取り組みを「ある程度評価していい」と話す。流れを維持するため、定着支援や、退職者らを本県に呼び込む医師バンクの実践も重要と説く。
 一方で、医療界には「地域偏在は改善していない」との声も上がる。医療提供体制は特に東部が弱いのに、奨学金利用者の多くが指導体制の充実した西部、中部を希望する。2019年度の地域別勤務は西部227人、中部174人に対し、東部60人。差は年々開くため、「奨学金が格差を助長している」との指摘さえある。
 東部の医師不足はコロナ対応で露呈した。感染者が急増した昨夏以降、病床使用率が5割を超える異常事態が頻発。県の後藤幹生疾病対策課長(当時)は「医療崩壊の恐れがある」と繰り返し、危機感を訴えた。
 今回の高齢者ワクチン接種も東部の7市町が当初、「自助努力では政府目標の7月末に完了できない」などと調査に回答した。無理に接種を進めれば通常診療が持たず、県は医師や歯科医師を募集などで集めて支援する。
 奨学金制度は現在、定員120人の半数に、賀茂や富士などの医師少数圏域に4年間の勤務を課す「地域枠」を導入した。その利用者が3月初めて学部を卒業した。
 県幹部は「ようやくだが、徐々に東部にも人材が送り込まれる」と説明する。その上で「関係機関が役割分担した効率的な地域医療を引き続き目指す」と強調した。
 (社会部・河村英之)

 知事・県の役割
 確保計画策定が義務
 医師の確保や偏在は全国的な課題。各地で模索が続く。政府は2019年度、医師確保計画策定を都道府県に義務付け、知事の責任を一層明確にした。県は計画で、県内の医師数は増加傾向にあるものの「二次医療圏ごとに偏りがある」と明記。24年までに275人の医師を増やした上で、36年までに偏在を改善するとした。対策の柱である奨学金制度は単年度で10億円超の予算を投入する。産科医や小児科医の確保も課題に挙げた。

 候補者の見解
 Q 本県は人口10万人当たりの医師数が全国平均より低く、地域偏在も課題です。この問題にどう対応しますか。

 川勝平太氏 実情応じ効果的配置
 2014年度から「ふじのくにバーチャルメディカルカレッジ」を実施し、毎年医学生120人に奨学金を貸与。利用者578人が県内病院で勤務中。医科系大学との地域枠協定で、その数は全国一。医師の、地域ならびに診療科の偏在は地域の実情に応じ効果的な配置を図る。看護者も関係団体の協力により養成を進める。

 岩井茂樹氏 専門病院で人材養成
 現在の医師不足は国の政策の失敗によるもので、その改善を国に求めたい。また、県内に国と連携して有事に機能する専門病院を開設し、平時には医療従事者の育成センターとして人材の養成に努めたい。ただ、当面は医師不足が続くことから、知事自らの働き掛けで医師数の確保に当たる必要があると考える。

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