大自在(6月2日) 選手たちの苦悩

 2015年のラグビーW杯イングランド大会で、日本が優勝候補の南アフリカを破った試合は今も脳裏に焼き付いている。後半、日本はヤマハ発動機の五郎丸歩選手によるトライとゴールで同点に。再びリードを許したが、同点ではなく逆転トライを狙ったロスタイムの選択が歴史的勝利につながった▼不可能などないと、見ている側が奮い立つような戦いだった。常人には“超人”とも思えるトップレベル選手の4割超が、実は心の不調を抱えている。日本ラグビー選手会がトップリーグ所属選手を対象に行った調査で明らかになった▼けがのリスクや社業との掛け持ちのストレスで、疲労や睡眠などの問題を抱える選手の割合が一般より約1割多かった。試合に出られないこと、競技力の低下、引退後の生活に悩む傾向もあったそうだ▼テニスの全仏オープンでは、選手の精神状態が軽視されていると会見拒否した大坂なおみ選手が棄権を表明した。長い間うつに悩まされてきたという▼東京五輪・パラリンピックに臨む代表選手はどうか。新型コロナの影響で1年延期された大会は感染収束が見通せず開催を不安視する声が内外にある。各国・地域の選手団に無償提供されるワクチンの接種には「五輪優先」の批判も聞かれる▼国際オリンピック委員会(IOC)のバッハ会長が開催実現のために「われわれは犠牲を払わなければならない」と発言し、波紋が広がった。今、大会開催を巡る分断の狭間[はざま]で選手は何を思う。その苦悩もまた、払わなければならない犠牲ということなのか。

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