川勝氏/岩井氏 政策対談詳報㊦ 静岡県知事選

 知事選を前に静岡新聞社が企画した政策対談で、立候補を表明している現職の川勝平太氏(72)と新人の元参院議員岩井茂樹氏(52)=自民推薦=は、経済対策や将来ビジョンに関しても論戦を交わした。コロナ禍で停滞した地域経済をどのように立て直すのか、コロナ後の新時代に県がどう対応していくべきか、思いを語った。

政策課題を語り合う川勝平太氏(左)と岩井茂樹氏=26日、静岡市駿河区登呂の静岡 新聞放送会館
政策課題を語り合う川勝平太氏(左)と岩井茂樹氏=26日、静岡市駿河区登呂の静岡 新聞放送会館


 ■Q3 経済対策 
 コロナ禍は社会経済活動に大きな影響をもたらし、本県も大打撃を受けています。「ものづくり県」と称されてきた産業経済の未来像をどう描きますか。
         ◇ 
 地域経済の立て直しは新産業を育てる戦略と表裏一体です。本県は自動車産業を中心に製造業の比率が高いのが特徴。一方、世界的な脱炭素の潮流やコロナ禍の影響で、構造転換は待ったなしの状況です。
 脱炭素、ウィズ・コロナ時代に県内経済をどう活性化させていくのか、本県ならではの成長戦略を描く必要があります。政府は2050年までのカーボンニュートラルを掲げ、経済成長と環境対応を両立させたグリーン社会の構想も必須です。

 岩井茂樹氏 農水産業 成長化に挑む
 地球温暖化に伴う二酸化炭素(CO2)排出削減、EV(電気自動車)化の流れはインパクトがある。自動車産業は本県経済を担ってきた。ガソリンエンジンがモーターに代わることに部品メーカーは戦々恐々としている。どう対応するかは知事の大きな仕事だ。エンジンには県民の手先の細やかさや発想の柔軟さが詰まっている。守るべきは守り、変えるべきは変えていくスタンスが重要。国と連携し、国の政策も活用しながら本県独自のものづくり産業を守っていく。
 茶の産出額が鹿児島県に抜かれた。1次産業の成長産業化が課題だ。本県は農業、水産業のしっかりとした土壌がある。県としても成長産業化に全力でトライすべき。稼ぐ農業に取り組み家族農業を支えることも重要だ。
 コロナの封じ込めと経済を回すバランスをどう取るか。ワクチンによって霧が晴れてきたならば、経済のアクセルを踏む作業が出てくる。飲食店を事前予約してお金が回る仕組みを観光業にも生かしたい。県の「ふじのくに安全・安心認証制度」は一歩踏み込み、認証を受けた事業者がインセンティブを受けられるようにしたい。事業者に寄り添い、責任を分かち合う姿勢が県に求められている。

 川勝平太氏 健康や観光 山梨と圏域
 消費税が上がり、個人消費が落ち込んだ。あおりを食らっているところに新型コロナがきた。県内の困っている人たちのために県産品を買い、県内の安全な場所に旅行してもらう「バイ・シズオカ」を始めた。個人消費の活気づけが生産者を元気づける。
 山梨県と一つの地域経済圏を形成して、財とサービスを相互購入する「バイ・ふじのくに」に取り組み、一体感が進んでいる。山梨は精密機械、静岡は医療器具・医薬品を持っているので、健康産業をつくりたい。第1次産業では、海産物、茶などで最先端の科学技術を取り込み、安定的に供給したい。さらに長野、新潟を加えた「バイ・山の洲(くに)」と称し、経済圏を大きくしていく。
 経済対策において観光産業は極めて重要になる。4月に69億円の補正予算を組んだが、これは国から本県に降ってきたもの。破格のお金だ。国は本県が観光産業で息を吹き返せると思っている。5月には(飲食、観光の事業者を支援するための国の臨時交付金)83億円が降ってきた。
 静岡と山梨が一緒に交流できるよう国に訴えていく。山梨はワイン、静岡にはお茶や日本酒がある。この地域経済圏で交流できれば相当活性化する。

 ■Q4 将来ビジョン 
 将来の県の展望についてどのように訴えますか。その狙いと、キャッチフレーズがあれば教えてください。
         ◇ 
 県の将来像に大きな影響を与える県の推計人口が360万人割れ目前と人口減に歯止めがかかっていません。若い世代が首都圏に転出したり、大学で学んだ後、静岡に戻らなかったりする事例が見られます。
 一方で「コロナ禍は東京圏から地方に目を向けさせる好機」です。リモートワークなど働き方改革を本県の人口減の局面転換に生かす施策が欠かせません。トヨタ自動車が裾野市で先進技術の実証都市の建設を進めています。デジタルの革命は県の将来像にも影響を及ぼしそうです。

 岩井茂樹氏 人口減克服へ三つの策
 コロナ禍を乗り越えるのが大前提として、人口減少を克服することが大事。人口減少は地域の力を失わせる。そこをどれだけ抑えられるか。その努力を4年間にするべきだ。
 内閣府政務官時代に地方創生に取り組んだが、女性という視点が大きかった。女性の仕事が静岡にあればいいというわけではなく、女性が当たり前に活躍できる環境づくりをしたい。
 人口減少を克服するために考えていることが三つある。一つは「安心安全」。津波、地震、豪雨など地域の災害対策から富士山の噴火まで県民の安心安全をどう守るかに注力したい。もう一つは「稼ぐ力」。県の工業製品出荷額はこの10年でマイナスになった。「ものづくり静岡」と言われた県がこのままではいけない。稼ぐ力を担保することによって仕事を創出したい。
 静岡県を誇りに思い、愛する県民を一人でも多くつくることも大事。子どもたちが東京に行って帰ってこないという声を聞く。この県に愛着を持ってもらえる教育に取り組みたい。
 トヨタ自動車の「ウーブン・シティ」にも期待したい。集まった関連企業をつなぐ役目をしたい。県の若者がそこで腕を磨き、世界に羽ばたいてほしい。

 川勝平太氏 SDGs 先進モデルに
 マニフェスト(公約集)のキャッチフレーズとして「東京時代から静岡時代へ!」を掲げた。静岡県は富士山もあり、温泉もあり、景色もきれいだ。住みよいし、国籍や宗教で差別されない。次の4年間で持続可能な開発目標(SDGs)の先進モデル県を目指す。
 本県も人口減少の問題がある。10代後半になると一度は静岡の外に出たいと思う。出て行くなと言う必要はない。地域の魅力を知らないまま出てしまうだけだ。高校生には卒業時、「ふじのくにパスポート」を発行し、静岡県の情報を発信している。また、静岡県をついのすみかとする30代前後の方もいる。皆さんから選ばれる地域になるためには、地域自立に大きくかじを切ることが大切だ。
 企業立地は全国でも常にトップクラス。裾野市にはトヨタ自動車の実証都市「ウーブン・シティ」ができる。2千人が来て、大半は外国人。公用語は英語と聞いている。教育面の心配もあるだろうから、インターナショナルスクールの構想を考えている。近隣の長泉町で医療城下町、いわゆるメディカルガーデンシティづくりを進めている。互いに実験的な都市づくりで親和性がある。ウーブン・シティという大輪が咲くよう額縁を整えたい。

 いわい・しげき 名古屋市出身。三島市在住。名古屋大大学院修了。前田建設工業に8年間勤務した後、参院議員だった父国臣氏の秘書に。富士常葉大非常勤講師を経て2010年7月に参院議員(静岡選挙区)初当選。経済産業政務官、国土交通副大臣を歴任。今月、2期目途中で参院議員を辞職した。52歳。

 かわかつ・へいた 京都府出身。静岡市葵区在住。早大政経学部卒、英オックスフォード大大学院博士号取得。早大教授や国際日本文化研究センター教授、静岡文化芸術大学長などを歴任した。2009年知事選で初当選。13年に再選、17年に3選を果たした。県観光協会と県スポーツ協会の会長を務める。72歳。

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