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リニアと水、有権者注視 島田市長選「意志貫いて」「説明を」

 6月に控える知事選でリニア中央新幹線の南アルプストンネル工事に伴う大井川の水問題が争点の一つとなる中、3人が立候補した島田市長選(5月23日投開票)にも注目が集まっている。島田市は実質的に流域10市町の取りまとめ役を担い、首長らと国交省との意見交換の場も設けられた。次期市長もこの重責を担うとみられ、有権者は「意志を貫く人を」「分かりやすい説明を」と論戦を注視している。

流域市町に大井川の水を送る起点となっている島田市の川口発電所(右側)=2019年8月、本社ヘリ「ジェリコ1号」から
流域市町に大井川の水を送る起点となっている島田市の川口発電所(右側)=2019年8月、本社ヘリ「ジェリコ1号」から

 3人の立候補者はいずれも「大井川の水を守る」と強調する。新人の土屋昌弘候補(60)は「自身も水枯れを経験したことがあり、取り返しのつかない事態を招くことは許されない」と述べる。現職の染谷絹代候補(66)は第一声でも水問題に触れ「毎年現地を確認し、経緯を熟知しているからこそ責任ある発言ができる」と自負する。新人の福田正男候補(68)は「水は全量戻しが原則。トンネル工事には反対」と一歩踏み込んだ発言をしている。
 市民の反応はさまざまだ。主婦の北川有香さん(49)は「リニアを抱える次の4年間。周りに左右されず、リーダーシップのある人が理想」と語る。期日前投票を行った市内の無職女性(80)は「島田だけでなく流域の人々の命に関わる。市長選でも一番の争点として考えた」。一方で茶農家の大塚隆秀さん(45)は国や県、JRの間で議論がこじれる様子に「具体的にどう影響があるのかはっきりせず、判断が難しい」と情報の少なさを指摘する。

 ■3候補の主張
▼土屋昌弘候補 
 取り返しのつかない事態を招くことは許されない。生活用水の井戸水が枯れた経験があり死活問題として取り組む。
▼染谷絹代候補
 今後も全力で「命の水」を守る。これまでの経緯を熟知し毎年現地の状況を見ているからこそ責任ある発言ができる。
▼福田正男候補
 大井川の水は貴重であり全量戻しが原則。地球温暖化防止、南アルプスの自然保護のためトンネル工事には反対。

 ■大井川流域のまとめ役
 大井川の水は中下流域の地下水の源となるほか、導水管を経由して発電を繰り返しながら島田市の川口発電所に至り、付近の取水口を起点に飲料水や農業、工業用水として流域市町に届けられる。農業用水を管理する大井川土地改良区や牧之原畑地総合整備土地改良区、7市に60万人分の水を供給する県大井川広域水道企業団などの組織の拠点が同市にある。
 県が設置する有識者会議の部会では流域自治体の代表として島田市が委員を務める。同市戦略推進課の担当者は「市域の中心を大井川が流れ、水との関わりでも中心的な役割を担っている」と話す。
 国土交通省の専門家会議が進むにつれ、流域10市町が国交省やJR東海に要望書を提出したり、同省鉄道局長が議論の内容を首長らに説明する場を設けたりと、国やJRと流域自治体が直接やりとりする場面も増えてきている。

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