祝いムード阻む「感染不安」 念願の初凧、主役は不在【逆風の中で 浜松まつり㊤】

 「ようやく揚げられる」。4月半ば、浜松市中区鹿谷町の亀山公会堂。浜松まつり参加団体「亀山組」の後藤敏行さん(62)は、初孫の匠ちゃん(2)の名前が記された4帖凧(じょうだこ)を眺め、笑みを浮かべた。凧揚げ会長を務め、これまで初子祝いの凧を何枚も揚げてきたが、身内は初めてだ。

孫の名前が書かれた大凧の状態を確認する後藤敏行さん。念願の初凧だが、主役は当日来場しない=18日、浜松市中区鹿谷町
孫の名前が書かれた大凧の状態を確認する後藤敏行さん。念願の初凧だが、主役は当日来場しない=18日、浜松市中区鹿谷町

 念願の初凧を揚げるはずだった昨年は新型コロナウイルスの影響で祭り自体が中止に。今年もコロナ禍の収束が見通せず、一時は初子祝いを見送ることも考えたが、「何もかも自粛というのは疑問」との思いが募り、実施を決意した。
 “主役”の匠ちゃんは長女の息子で、かわいい盛り。ただ、まん延防止等重点措置が適用されている愛知県に住んでいる。不要不急の移動自粛が求められていて、当日は凧揚げ会場を訪れない。後藤さんは「できれば、一緒に揚げたかった」と残念がる。
 まつり組織委員会によると、今年の参加97町のうち、初凧揚げを予定しているのは29町にとどまる。見送った町からは「感染者が出たら祝いどころではない」「夜の飲食も含めて盛大に祝える環境になってから揚げたい」などの声が漏れる。
 組織委は感染リスクについて「ルールを守れば、安全を確保できる」と自信をのぞかせる。その裏付けは、昨年11月から今年3月まで、凧揚げ会場で4回開かれた凧揚げ技術伝承会。本番と同様に、マスク着用の義務付けや検温実施、参加者の名簿管理などの対策を参加町に課した。千人以上が参加した回もあったが、感染は1人も確認されていない。
 伝承会を担当した組織委企画統制監理部の伊藤安男部長(68)は「本番がどんな様子になるかを確認でき、感染対策を練る上で役に立った」と振り返る。
 市感染症対策調整監を務める浜松医療センターの矢野邦夫医師(65)は「マスクから鼻を出さない、祭り期間は同居家族以外との会食は控える」などの対策ポイントを挙げ、「凧揚げ会場での感染はほとんど発生しないと思われる。適切なマスク着用を徹底してほしい」と強調する。
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 コロナ禍に翻弄(ほんろう)されながら、浜松市で5月3日に開幕する浜松まつり。収束が見通せない中、市民は参加、不参加の難しい判断を迫られた。「伝統を継承したい」「感染対策は大丈夫なのか」。悩み抜いて参加を決めた市民や、苦境に立たされる祭り関連業者の思いに迫る。

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