ガルシアブリューイング(静岡市清水区)フレディ・ガルシアさん 夢の場所まで10年超 ペルー雑穀で独自色【しずおかクラフトビール新世代⑫】

 醸造機器は少しずつ買った。時には自分でつくった。ガルシアブリューイング(静岡市清水区)の工場は、長い時間をかけて整えられている。ペルー出身の醸造責任者フレディ・ガルシアさん(44)は「夢が実現するまで10年以上。でも、疑いはなかった。いつかかなうと信じていた」と振り返る。

仕込んだビールの状態を確認するフレディ・ガルシアさん=4月上旬、静岡市清水区のガルシアブリューイング
仕込んだビールの状態を確認するフレディ・ガルシアさん=4月上旬、静岡市清水区のガルシアブリューイング
「ソル ナシエンテ ヘイジーIPA」(右)と「ブエナビスタ日本平」
「ソル ナシエンテ ヘイジーIPA」(右)と「ブエナビスタ日本平」
仕込んだビールの状態を確認するフレディ・ガルシアさん=4月上旬、静岡市清水区のガルシアブリューイング
「ソル ナシエンテ ヘイジーIPA」(右)と「ブエナビスタ日本平」

 一番古い240リットルのタンクは2013年に購入。もちろん、それだけでビールはつくれない。自動車工場、水産会社、大工-。仕事から得た給料を積み立て、一定の額がたまるごとに一つ一つ機器を購入した。「外国人だから金融機関の融資は望めない。最初は全部自己資金」。2019年に醸造免許を取得し、工場を稼働させるまでは、臥薪嘗胆[がしんしょうたん]の日々だった。
 実現させる価値のある夢だと思ったから耐えられた。兄ジャン・ガルシアさん(46)を頼って静岡市に来たのは04年。07年に沼津市で飲んだクラフトビールがフレディさんの運命を変えた。
 「当時沼津で醸造していたベアード(ブルーイング)のビアパブで飲んだエールに衝撃を受けた。色、香り、味の全てが個性的。一つ一つのビールにキャラクターがあった」。かねてから自分のパーソナリティーを託した商品を自らの手でつくりたいと考えていた。「クラフトビールならそれがかなうと思った」
 10年、母国の小規模醸造所で研修を積み、再来日。同市清水区を拠点に、ビール醸造の夢に向かってまい進した。11年にはジャンさんとチーズ工房を、16年にはビアパブを開いた。醸造所は夢の最終地点だった。「好きなことなら、いくらでも頑張れる。日本で事業をさせてもらえて本当にありがたい」
 独自色を出そうと、定番のビール5種には副原料にペルーの雑穀「キヌア」を使っている。「栄養価の高さに定評がある。特徴もつかめてきた」。タンパク質が多いためか、アルコール度数が低くてもしっかりしたボディーが得られるという。
 20年から、ミカンやイチゴなど、近隣の産物を用いた限定ビールをつくりはじめた。「いつか久能地区特産の葉ショウガを使いたい」と意気軒高だ。
 (文化生活部・橋爪充)

 ■ソル ナシエンテ ヘイジーIPA
 ■ブエナビスタ日本平

 定番の一つ「ソル ナシエンテ ヘイジーIPA」(右)は、少し白濁した黄色と、ホップに由来するパッションフルーツ、モモ、ライムを思わせる華やかな香りが特徴。ボディーはしっかりしているが、のど越しが良く切れもある。
 「ブエナビスタ日本平」は、「いい景色」という意味のスペイン語を冠した、ミディアムボディーのペールエール。モルトの豊かな香りと穏やかな苦みの中に、ほんのりとした甘み、かすかな酸味が感じられる。アルコール度5.5%で、非常に飲みやすい。

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