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社説(4月2日) トヨタ未来都市 先端技術を地元振興に

 トヨタ自動車が裾野市で計画する先進技術の実証都市「ウーブン・シティ」の建設に着手した。構想発表から1年。自動運転や人工知能(AI)など最新技術を活用した暮らしの実現を目指す未来都市づくりが動きだした。
 豊田章男社長は「地域とともに未来に向けた歩みを進めることを約束する」と連携、貢献の姿勢を強調している。構想の具体的な中身は明らかになっていないが、裾野市は世界的に注目を集めるウーブン・シティ構想の具体化を契機に、先端技術の成果を取り込む新たなまちづくりを進めてほしい。
 ウーブン・シティの建設場所は昨年12月に閉鎖したトヨタ自動車東日本東富士工場の跡地約70万平方メートル。ゼロから新しい街が生まれることになる。最初に高齢者や子育て世代、発明家ら360人ほどが入居し、将来的にはトヨタ従業員を含む2千人が暮らす計画になっている。連携の呼び掛けには3600の個人・法人から応募があったという。
 高村謙二市長はウーブン・シティを「閉じたテーマパークのような空間にしない」と述べ、市としても連携を目指していく方針を示す。最寄り駅となるJR御殿場線岩波駅周辺の整備を喫緊の課題とし、新たな基本構想を策定して拠点整備を進める。デジタル技術を活用して地域課題の解決を図る次世代型近未来都市の実現を加速させる。県内外の産官学73団体が参加したコンソーシアムでは、参加企業による実証実験も始まった。
 市はウーブン・シティと連携したまちづくりで、産業構造の転換も狙う。実証都市として世界に発信するウーブン・シティの知名度を利用し、研究開発の人材やスタートアップ企業の誘致などにつなげることも大切だ。
 将来的には自動運転車の走行や、自然環境を生かした農業分野など、市域全体が実験場となる可能性もある。新市民の誕生を見据え、教育やごみ処理、下水道など日常生活に関わる問題についての協議も必要になろう。
 県も円滑な整備に向け、部局横断の専門チームを設置して市やトヨタからの相談などに迅速に対応できる態勢を整備している。ファルマバレーセンターもパートナーに手を挙げ、共同研究を目指している。県には、裾野市だけでなく本県全体への波及を視野に、積極的な連携を求めたい。
 「世界の裾野」を目指した動きは始まったばかり。常に発展を続ける「未完成の街」というウーブン・シティの理念と足並みをそろえ、未来のまちづくりに挑みたい。

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