時之栖富士(富士市)冨川宏一さん 醸造20年新たな挑戦 知見をレシピに凝縮【しずおかクラフトビール新世代⑦】

 傘下に御殿場高原ビールや伊豆の国ビールを持つ時之栖(御殿場市)が、富士市の常葉大富士跡地に開業した複合型スポーツ施設内で醸造する「富嶽麦酒」。今夏完成した新ビールブランドは、工場長の冨川宏一さん(43)=御殿場市=が、約20年の醸造経験と欧州各国を訪問して得たビールの知見をレシピに凝縮した。

麦汁を発酵させた「若ビール」の糖度を測定する冨川宏一さん=11日、富士市の時之栖富士
麦汁を発酵させた「若ビール」の糖度を測定する冨川宏一さん=11日、富士市の時之栖富士
富嶽麦酒
富嶽麦酒
麦汁を発酵させた「若ビール」の糖度を測定する冨川宏一さん=11日、富士市の時之栖富士
富嶽麦酒

  「1月に缶のデザインが決まり、キャッチコピーの『濃くて苦い』が刷り込まれていた。苦みを生かしたIPL(インディアペールラガー)というスタイルは決めていたが、缶に合わせる形でレシピを最終調整した」
  新工場はビールだけでなく、ウイスキーやハイボールも製造する。冨川さんにとっては、不惑を超えてのチャレンジだ。「声が掛かったのは1年半ほど前。酒をつくるだけでなく、後進も育てる。販売や営業、配送も自分でやる。大変だけれど、大手では絶対に経験できない仕事。やりがいがある」と前を見据える。
  出身も御殿場市。鹿児島県で過ごした大学生時代にアルバイト先のレストランで、同県内で醸造していたビールに出合い、その後の帰省時に地元のリゾート施設「御殿場高原時之栖」内にある御殿場高原ビールを知った。クラフトビールの味や多様性に魅かれ、自らの進路に定めた。
  大卒後の1998年に同社入りし、99年から醸造に携わる。当初は醸造の知識は皆無。併設レストランのビールサーブ担当からキャリアを積み重ねた。
  90年代後半の「地ビールブーム」と2000年代前半の衰退、10年前後からの「クラフトビール」の人気。ビール業界の栄枯盛衰を全て現場で体感してきた。「浮き沈みはあったけれど、新鮮なビールを飲んでくれる人は常にいた」と感謝する。
  御殿場高原ビールは、醸造がスタートした95年から定番商品のピルスナー、ヴァイツェンのレシピをほぼ変更していない。醸造過程で起こる細かい機器の変調を、一つ一つ解消することで品質を維持してきた。
  気が付けば人生の半分をビールづくりに費やしている。頭の中には新醸造所でつくりたいビールのレシピが、はち切れんばかり。「特定の原料が突出してはいけない。バランスが優れたビールをつくりたい」と意欲を語った。
 (文化生活部・橋爪充)
 
  ■富嶽麦酒
  富嶽麦酒はアルコール度5.0%のIPL。ドイツのハラタウモンロー、ペルレ、英国のケントゴールディングスのホップ3種を組み合わせ、下面発酵酵母で仕上げた。香りは穏やかで、飲むと上品な苦みと甘みの余韻が心地よく舌の上に残る。缶製品は県内スーパーでも手に入る。

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