反射炉ビヤ(伊豆の国市)山田隼平さん ワイン製造技術応用 木のたるで発酵熟成【しずおかクラフトビール新世代③】

 世界遺産構成資産の韮山反射炉の隣で醸造する反射炉ビヤ(伊豆の国市)。1994年の酒税法改正に端を発する第1次地ビールブームさなかの97年に開業した、県内有数の老舗ブルワリーだ。浮沈が激しいビール業界の中で生き残り、24年目の夏を迎えている。

熟成たるが並んだセラーでビールの品質を確認する山田隼平さん=7月上旬、伊豆の国市の反射炉ビヤ
熟成たるが並んだセラーでビールの品質を確認する山田隼平さん=7月上旬、伊豆の国市の反射炉ビヤ
木樽のペティアン(左)と麦酒太郎左衛門(右)
木樽のペティアン(左)と麦酒太郎左衛門(右)
熟成たるが並んだセラーでビールの品質を確認する山田隼平さん=7月上旬、伊豆の国市の反射炉ビヤ
木樽のペティアン(左)と麦酒太郎左衛門(右)

  醸造長の山田隼平さん(27)=東京都出身=は山梨大工学部の特別コースでワインを学んだ。酵母菌をはじめとした微生物の生態から、ブドウの栽培と収穫、仕込みの方法、味わいの表現まで、実地研修を交えてあらゆる知識と技術を習得した。
  2015年、反射炉ビヤに入社。今度は一からビール造りを教え込まれた。工程の違いに改めて気付かされた。「ワインはブドウをつぶし、そのジュースに酵母を入れる。ビールは60度ぐらいの湯の中で麦芽を糖化し、麦汁の殺菌で煮沸も行う。熱を入れる点が大きく異なる」
  容量150リットルの小規模タンクで仕込みを繰り返し、ビールの製造法をマスター。19年5月には醸造長を任された。「ビールの魅力は多様性」を旗印に、年間約40種を世に問う。イチゴやマンゴー、塩など近隣の特産物も副原料として積極的に活用する。
  約3年前から木たるで発酵させる「バレルエイジド」に取り組む。新たな試みとして、他の醸造所からも注目を集める。「ワインを学び、ワイナリーで働いた経験をビール造りに生かしたい」という願いを徐々に形にしている。
  ビール製造は麦汁に酵母とホップを入れてステンレスタンクで発酵させるのが一般的だが、山田さんはオークだるで発酵熟成を連続して行う。たるはワイン貯蔵に使っていたものを取り寄せた。バーボンが入っていたウイスキーだるも導入。工場の地下セラーには約10たるが並ぶ。
  「木のたるは呼吸している。緩やかに酸素が入ることで、味や香りが複雑になり、洗練されていく」。熟成する期間はアルコール度数によるが、3~6カ月が目安という。
  製法の進化は続く。「伝統と革新を両立させる」。近年はワイン酵母、ワイン醸造用のブドウに付着した自然酵母も使う。酵母とたるの相性、醸造期間の検証など、最適解を探す旅が続く。
 (文化生活部・橋爪充)

■太郎左衛門と木樽のペティアン麦酒
  醸造所設立時から続く定番ブランド「太郎左衛門」は、英国のパブを強く意識した濃色のイングリッシュペールエール。程よく焙煎[ばいせん]されたモルトの落ち着いた味わいと、軽やかな苦みが特徴。江戸時代末期の韮山代官への敬意を込めたブランド名で、長く地域に愛されている。
  「微発泡」を意味するフランス語を使って命名された「木樽のペティアン麦酒」=同左=は小麦から作られたウィートモルトなど2種類のモルトと、アメリカンホップ、ワイン酵母で醸造。オークだるで3カ月発酵熟成させた。炭酸はわずかで、口に含むと華やかな香りがいっぱいに広がる。

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