流域、懐疑的な見方 山梨からの湧水戻しJR案【大井川とリニア】

 リニア中央新幹線工事に伴う大井川の流量減少問題を巡り、トンネル湧水の県外流出対策としてJR東海が2月末の国土交通省専門家会議で説明した「貫通後に山梨県の湧水を大井川に戻す」案が迷走している。国交省が14日に島田市内で開いた流域10市町の首長らとの意見交換会で改めて説明したが、流域からは「本当にできるのか」と懐疑的な見方が示された。

「山梨県の湧水を大井川に戻す案」のイメージ図
「山梨県の湧水を大井川に戻す案」のイメージ図
国土交通省鉄道局との意見交換後に取材に応じる大井川流域市町の首長=14日、島田市内
国土交通省鉄道局との意見交換後に取材に応じる大井川流域市町の首長=14日、島田市内
「山梨県の湧水を大井川に戻す案」のイメージ図
国土交通省鉄道局との意見交換後に取材に応じる大井川流域市町の首長=14日、島田市内

 JRの試算によると、先進坑(本坑の前に掘削するトンネル)が貫通するまでに静岡県内で発生したトンネル湧水が山梨県に流出する量は300万トンに上り、小学校のプール約1万個分に相当。ほとんどの水がトンネルから流出するとみられる。一方、トンネル貫通後に山梨県で発生する湧水量は明確になっておらず、トンネル内の貯水槽(釜場)は小学校プール約2個分。ポンプアップできる量は限られ、失われた300万トンを補うことができるのか、専門家会議では戻すまでの時間差が問題視された。
 非公開で開かれた14日の意見交換会で国交省がこの方法の考え方を説明したのに対し、流域市町から質問が相次いだという。終了後の取材で牧之原市の杉本基久雄市長は「1回流れてしまったものをどうやって戻すのか」とただしたが、国交省から詳しい回答はなし。他の首長は「案が一つ出された。これからの問題」(北村正平藤枝市長)、「今後の議論の行方を見守る」(染谷絹代島田市長)と評価を避けた。
 一方、山梨県には4日にJRが説明に訪れたが、静岡県に戻す水量の具体的提示はなかったという。山梨県の担当者は取材に「環境影響評価(アセスメント)で議論になっていなかった部分なので、生態系への影響も心配だ」と語った。
 国交省鉄道局の江口秀二技術審議官は意見交換会後、記者団に、専門家会議で方法は具体的に詰めず、JRと地元との話し合いで決まっていくと説明した。しかし、川勝平太知事はこの山梨県の湧水を戻す案について、環境アセスで求めたトンネル湧水の全量戻しに該当しないとの認識を示している。

いい茶0
あなたの静岡新聞 アプリ
地域再生大賞