社説(2021年3月6日・土曜日)=農産物の輸出拡大 静岡県戦略にも数値目標を

 農林水産省のまとめによると、2020年の農林水産物・食品の輸出額は9223億円と8年連続で過去最高を更新した。しかし、政府目標の1兆円には届かなかった。新型コロナウイルス感染拡大の影響とみられる。
 海外でも外食需要は低迷したが、鶏卵やコメ、乳製品、カツオ・マグロ缶詰など主に家庭で消費される品目が伸び、前年比1・1%増となった。
 環太平洋連携協定(TPP)など自由貿易の拡大を機に、政府は農林水産業の競争力強化と基盤整備に力を入れ、輸出額目標を25年に2兆円、30年に5兆円としている。
 静岡県は「ふじのくにマーケティング戦略」を策定し、毎年専門家の意見を踏まえ更新している。現在取りまとめ中の21~23年度戦略は新型コロナウイルス収束後を見据え、環境変化や行動変容に対応したデジタル技術活用の加速などを打ち出した。
 輸出は茶、イチゴ、ワサビ、メロン、日本酒を重点品目としているが、方向性を示しただけで目標額は定めておらず、戦略と呼ぶには頼りない。進捗[しんちょく]状況を把握するためにも、現況を調査し、数値目標を設定すべきだ。
 茶、イチゴ、日本酒は、政府の輸出重点品目のリストにもある。国の施策と車の両輪として進めるためにも基礎資料となる数字は不可欠だ。
 茶の20年輸出額は前年比10・6%増の162億円だった。ところが、このうちどれほどが生産日本一の本県産かは分からない。貿易統計を詳しく見ると清水港からは55%増の37億円だったが、県外の港や空港からの輸出もあるとみられる。戦略の実効を高めるには、輸出を手掛ける事業所に直接聞き取るなど、県が率先して動いてもらいたい。
 農水産品の輸出には特に鮮度と衛生管理が要求される。また、一定の数量をまとめて効率的に輸送するには、JAグループなどの支援も欠かせない。
 官民の協働事例として、「岐阜イチゴ」が挙げられる。昨年の検疫条件合意を受け、先月、豪州へ初の日本産イチゴ輸出を実現した。岐阜県のイチゴ生産量は全国16位、シェア2%程度だが、飛騨牛の輸出実績やJAの協力、知事によるトップセールスなど、独自戦略を実らせた。
 日本のイチゴはおいしくて見た目もよく、海外で人気がある。本県も高規格冷蔵コンテナを使うなどして清水港からアジアへの輸出増に照準を合わせる。清水港活性化は地域経済の重要課題であり、支援策とともに熱意が求められる。輸出拡大へ官民連携をさらに強化し、独自性を追求する必要がある。

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