築60年以上、三島市役所の新庁舎整備 現在地?移転? 議論大詰め【ニュースを追う】

コスト、防災、にぎわい創出…論点は多岐に

築60年以上が経過し、老朽化した本庁舎=三島市北田町
築60年以上が経過し、老朽化した本庁舎=三島市北田町
整備候補地の位置関係
整備候補地の位置関係
北田町(現在地)の配置案 南二日町広場の配置案
北田町(現在地)の配置案 南二日町広場の配置案
三島市役所新庁舎配置計画案の比較
三島市役所新庁舎配置計画案の比較
三島市議の意見
三島市議の意見
築60年以上が経過し、老朽化した本庁舎=三島市北田町
整備候補地の位置関係
北田町(現在地)の配置案 南二日町広場の配置案
三島市役所新庁舎配置計画案の比較
三島市議の意見

 築60年以上が経過した三島市役所の新庁舎整備を巡り、市は8月に建設候補地を表明する。候補は、市中心市街地の一角にある現在地の北田町での建て替えか、JR三島駅から南に約2キロ離れた国道1号沿いにある南二日町広場への移転新築か。建設や維持に要するコスト、防災面での立地適正、市中心街のまちづくりへの影響―。論点が多岐にわたる中、市は難しい判断を迫られる。

市民調査の結果踏まえ、8月に判断表明
 「しっかりと熟慮する必要がある」。昨年10月、建て替えと移転の両論が併記された意見書を市議会から受けた豊岡武士市長は、当初予定していた11月の候補地決定を見送った。市は、庁舎や駐車場の規模を見直した上で、庁舎の配置計画を新たに作成。1万人規模のアンケート結果を通じて市民の意見を捉え、結論を出す方針に切り替えた。
 市の資料や説明によると、概算事業費は現在地が割高となる。手狭な敷地に建て替えるため、立体駐車場や仮設庁舎の建設が必要となるのが大きな要因だ。「想定使用年数80年」の運用や維持管理にかかる費用を加えた生涯コストも多額となる。
 市は昨夏、生涯コストで48億~85億円の差が開くと算出した。その後、人口減やデジタル化など社会情勢の変化を見据えた駐車場や庁舎の規模縮小を求める市議会の意見を踏まえ、計画を見直した。大幅に縮減されたものの、24億円の差がいまだに残る。現庁舎を使用しながらの工事は最短で6年と、南二日町の3年よりも長い。10年かかるとの指摘もあり、さらなる負担増は否定できない。解体と建設を繰り返すため、不便な状態が長期間続く事態にもなる。
 防災面は想定する災害によって一長一短と言える。南二日町広場は千年に1度の洪水浸水想定区域にある点が懸念される。市は土地のかさ上げによる対策を講じる方針だが、周辺への影響を含めた不安の声がある。一方、大規模地震などの災害時には、現在地よりも敷地が広いため、自衛隊の活動拠点の併設が可能。応援団体との連携が図りやすい利点は大きい。一方の現在地は水害リスクがないが、災害時の活動拠点の機能的配置に困難さが残る。
 現在地を望む声の多くは、移転に伴う周辺市街地の衰退への懸念だ。本庁舎など周辺庁舎には約600人の職員が働き、来庁者が日々訪れる。多くの人間が行き交う場所が移転するため、特に周辺の商店主らの不安は大きい。ただ、市が行ったモデルでは南二日町広場に移転した場合の方が、市街地全域の滞在時間が増えるとの結果が出た。市は跡地を民間が活用する場合、条件付きで売却して実効性を担保することで新たなにぎわい創出につなげられるとしている。
 多額の税金を投資する以上、6月中にまとまる市民アンケートの結果だけで判断するわけにはいかないだろう。ある市議は「議員や市民に意見を求めるだけでなく、市長のビジョンを示してほしい」と訴える。市は移転を選択した場合、移転に伴う市街地衰退への不安を拭う必要があり、現在地を選択した場合は、多額のコストをかけるだけの利点について確固たる説明が求められる。三島市の将来像をどう描くかが問われている。

割れる市議意見 移転は3分の2以上の同意必要
 新庁舎整備の実現には、市議の判断が大きく影響する。南二日町広場に移転する場合、庁舎の設置場所を定めた条例制定が必要となり、議会の3分の2以上の同意が求められるためだ。
 市議22人の中で、候補地に対する意見は割れている。昨年10月の段階では、現在地の建て替えが13人、南二日町への移転は4人だった。市議会は当時、意見を集約し、合意形成した上で市に提言しようと検討を進めた。しかし「意見が非常に多様で、一本化できない」として、各議員の立場と意見をそのまま集計した意見書を提出した。
 同じ会派内でも違う立場を示す場合もあり、市議それぞれが最終的な判断をどう下すかは流動的。特に市民アンケートの結果次第では、立場を変える議員も出てくると予想される。
 5月15日の市議会臨時会で、退任のあいさつに立った藤江康儀前議長は「8月の(候補地)決定前には、市民の意見を踏まえたふさわしい意見を表明する予定だ」と言及した。しかし、整備候補地周辺に支援者が多い議員らは態度を変えられないと予測され、関係者は「意見をまとめるのは難しいのではないか」と見込む。市は整備候補地の方針決定後も、市議の理解をどう得ていくか難題を抱えそうだ。

1960年に本庁舎建設 2031年の供用開始目指す
 新庁舎整備に関する議論の発端は2014年に市が作成した公共施設白書にさかのぼる。老朽化して改修が必要となる施設の状況や人口減少に伴う税収減などを考慮し、行政サービスを維持していくために施設の廃止や減床の必要性が指摘された。
 そのうちの一つが1960年に建設され、老朽化が進む本庁舎だった。市は公共施設全体を効率的に管理、運営する観点から議論を開始した。市議会も2016年に特別委員会を設置し、17回にわたる会議を経て当局に報告書を提出した。庁舎に関しては老朽化に加え、構造が狭く分散した庁舎による利便性や事務効率の悪さを指摘した。
 市は市議会の提言に加え、市民会議や市民アンケートを重ね、分散した庁舎を集約化し、新たに建設する方針を固めた。整備規模を考慮し、整備候補地として2カ所を選出した。
 市は本年度に基本構想を策定し、市制90周年となる2031年の供用開始を目指している。

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