【時評】小集落の防災機能確保 都市計画の手法活用を(岩田孝仁/静岡大防災総合センター特任教授)

 急速な人口減少と高齢化が進む日本の中でも、地方はその傾向が顕著である。今年の元日に発生した能登半島地震は、まさにそうした地域を襲った。突然の災害で過酷な負荷がかかった時、地方の小集落がどう生き残っていけるかは日本社会の大きな課題である。

 日本列島のどこに住んでも地震発生の可能性はある。地震対策には住宅の耐震化が基本であり、全都道府県の平均では耐震化率が87%(2018年現在)とのことであるが、今回の被災地の能登半島では50%前後の自治体が多い。地震対策を進めてきた本県でも、耐震化率60%前後の自治体は決して例外ではない。経済活動の活発な都市域は建て替えや新築需要も多く、結果的に耐震化率は高くなる。一方、地方の集落では建て替えは少なく、自治体の補助金があっても耐震補強はなかなか進まない。人口減少や高齢化が進むと、個人の決断だけに委ねるのでは限界に近づいている。
 さらに、空き家の増加も耐震化を阻害する要因になる。総務省の23年住宅・土地統計調査では、全国の空き家率は13.8%、本県も16.6%と調査のたびに増加傾向にある。高齢化とともに人口減少が拍車をかけ、県内でも空き家率20%を超える自治体もみられる。耐震性の乏しい空き家が増加すると、地震時に避難路をふさぐなど大きな問題にもつながる。南伊豆町では老朽化などで災害時に危険となる空き家の撤去に、自治会からの申請があれば最大300万円を補助する制度を立ち上げた。画期的な取り組みである。
 将来を見据えると、中長期の視点から公共事業として街並みの再生に取り組まないと解決できないところへ来ている。解決するためには自治体が主体となって都市計画的な手法を活用し、地方の小さな集落でも防災機能確保のため通路を拡幅して避難路を整備するのも一つの方法だ。空き家が目立つ地区では、その撤去に併せて小規模でも街並みの再整備を行うことを考える必要がある。
 もともと都市計画では、街の均衡ある発展と公共の福祉の増進を目的とし、安全で安心して暮らせて産業の発展にも寄与することが大前提である。こうした都市計画事業の枠組みを、大都市に人が集中し経済が右肩上がりだった時代の発想から人口減少社会に対応するよう大きくかじを切り、地方の集落再生や経済安定にも目を向けた制度へと方向転換していくべきであろう。
(岩田孝仁/静岡大防災総合センター特任教授)

 いわた・たかよし 元県危機管理監。1955年、大阪府生まれ。静岡大理学部卒。県の防災専門職として、東海地震対策を中心に「防災先進県」の土台づくりに取り組んだ。89年の伊豆東部の群発地震と海底火山噴火の際は、現地で国や伊東市との調整に奔走。日本災害情報学会副会長や内閣府の「火山防災エキスパート」、県立大客員教授などを務める。

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