【時評】能登半島地震 多様な現象が全て発生(牛山素行/静岡大防災総合センター教授・副センター長)

 元日の北陸地方を襲った能登半島地震。23日時点では死者233人(うち災害関連死15人)、安否不明者19人と発表されている。なお災害関連死者とは、災害による負傷の悪化や避難生活などにおける身体的負担による疾病での死者であり、1995年の阪神・淡路大震災以降に一般化した概念である。それ以前の災害でも同様なケースはあったと考えられるが、災害の死者数としては記録されていない。従って、過去と近年の災害の人的被害規模を見比べる際には、直接死者の数で見るよう注意しなくてはならない。

 直接死者数で見ると今回の人的被害規模は93年の北海道南西沖地震(死者・行方不明者230人)に近く、戦後の地震災害としては2011年の東日本大震災(直接死者・行方不明者約1万8500人)、阪神・淡路大震災(同約5500人)、1948年の福井地震(死者3769人)、46年の昭和南海地震(死者・行方不明者1443人)に次ぐ規模となる可能性もある。実に痛ましいことが起きてしまった。
 今回の地震では、揺れによる建物倒壊、火災、津波、土砂災害など、地震に伴って起こりうるさまざまな現象が、いずれもかなりの規模で発生してしまったことが特徴の一つと感じている。
 東日本大震災では津波の被害は甚大だったが、揺れによる建物倒壊は目立たなかった。三陸の沿岸部などで津波による建物の流失・倒壊は無数に見られたが、津波到達直前に記録された映像、災害後の津波到達範囲外の映像や筆者の当時の記憶をたどっても、至る所で建物が倒壊し道が通れない所ばかりといった状況ではなかった。これは不幸中の幸いと見ることもできたが、こうした状況が伝えられることで地震の際にも普段通りの道をたどって津波からの避難ができるかのようなイメージが社会に定着すると困ると懸念もしていた。
 今回能登で津波の被害を受けた地区の映像を見ると、多くの建物が倒壊し道路も通行困難となった場所をさらに津波が襲っている状況がうかがえる。恐ろしいことだが、これがむしろ一般的な地震・津波災害の姿と言えよう。
 過去の災害に学ぶことは無論重要だ。しかし、特定の災害事例「だけ」に学ぶことは、十分起こりうる他の現象を見落とすことにつながりうる。広い視点から考えておくことの重要性を改めて認識している。
 (静岡大防災総合センター教授・副センター長)

 うしやま・もとゆき 長野県生まれ。信州大卒業。京都大防災研究所助手、東北大災害制御研究センター講師、岩手県立大准教授などを経て2009年に静岡大着任。内閣府、気象庁、自治体などの公的委員を歴任。日本自然災害学会副会長。専門は風水害を主対象とした災害情報学。

いい茶0
あなたの静岡新聞 アプリ
地域再生大賞