親知らずの抜歯、必要? 手前の歯との間でむし歯、歯周病の恐れ【歯の診察室】
問 40代男性。以前、親知らずを1本抜きましたが、その後、数日間、痛みがあり、飲食も大変だったため、あと3本を抜く気になれません。以前からむし歯はないため、抜かなくても大丈夫でしょうか?
答 親知らずの抜歯は痛みが伴うこともあり、抜いた後もしばらく痛むこともあるため、症状がなければ放置してしまう方も多いと思います。しかし、下の親知らずは斜めや横向きに生えてくることが多く、どんなに丁寧に磨いても親知らずと手前の歯との間に歯ブラシが届かない場所が出てしまいます。
症状が出てきた時には、親知らずや手前の歯のむし歯が進行していて、最悪の場合、親知らずの手前の歯も抜歯しなければいけないこともあります。むし歯だけでなく、親知らずが原因で歯周病が手前の歯との間で進行していることもあり、親知らずを抜いたら、手前の歯にぐらつきが出てくることもあります。親知らずが真っすぐ生えてきたとしても、口の中の一番奥に生えてくるため、歯ブラシが届きにくく、むし歯になりやすいです。
親知らずがむし歯になってしまった場合、治療器具が届きにくく、治療後のメンテナンスも難しいので、治療したとしても、高確率でむし歯が再発します。そのため親知らずのむし歯が治療できる位置でも、抜歯を勧めることが多くなります。親知らずが真っすぐ生えていて、歯ブラシでのケアが十分にできている場合や、骨に完全に埋まっていて特に悪影響がなく、神経・血管が近いため、抜歯するリスクの方が高い場合には、抜歯を勧めない場合もあります。
また、上の親知らずは下に比べて、抜歯中の痛みや抜歯後の痛みが少ないことが多いです。担当の歯科医に親知らずの現状と放置した後の予後を説明してもらい、相談して抜歯するか決めてください。
(瀧正彬・静岡県歯科医師会生涯研修部)