おせち商戦、多彩な提案 静岡県内百貨店、コロナ下で伸長した需要維持へ 「大人数」「若者」照準/「小サイズ」依然人気

 新年用おせち料理の商戦が県内百貨店で追い込み期を迎えている。新型コロナウイルス感染症の5類移行後に初めて迎える正月で、家族や友人で集まる機会の増加を見込んで大人数用の商品を強化する一方、コロナ下で伸長した小サイズ品を引き続き展開する店も。原材料高で販売価格が5~10%上昇する中、各店は販売方法を見直したり、若年層に人気の商材を拡充したりして、顧客の獲得とつなぎ止めに工夫を凝らす。

おせちの見本が並ぶ店内=10月下旬、静岡市葵区の松坂屋静岡店
おせちの見本が並ぶ店内=10月下旬、静岡市葵区の松坂屋静岡店


 松坂屋静岡店(静岡市葵区)は、親族などで集まるだんらんの機会が本格的に回復するとみて、4~5人用の4段重(税込み3万7800円)計3点を初めて用意した。京都の料亭などが監修し、イセエビやカニといった高級食材をふんだんに取り入れた。
 各世代が楽しめるよう、人気キャラクター「ミニオン」をモチーフにした品や、細かく加工した食材を再成形し、かむ力が弱い高齢者が食べやすい品もそろえた。同市清水区の女性団体職員(59)は4人用の2段重を購入。「コロナ前以来4年ぶりに、両親を呼び寄せて新年を過ごすのが楽しみ。ボーナスも活用し、華やかな年末年始にしたい」と話した。
 従来よりも若い客層を狙った品を充実させたのは遠鉄百貨店(浜松市中区)。複数種類のローストビーフを詰めた品や、中華料理を盛り込んだオードブル系のおせちなどを前年比で約4割増やした。
 同店によると、60代以上の顧客が多い中元や歳暮と異なり、おせちは30代の顧客も目立つ。三宅隆史マーケティング戦略課長は「物産展の延長のような感覚で楽しむ人が多い。おせちを入り口に、将来にわたって店を長く利用してもらう契機にしたい」と話す。
 静岡伊勢丹(静岡市葵区)では、コロナ下で伸長した1~2人用の小サイズ品が引き続き人気を集めている。小籏大祐バイヤーは「コロナ5類移行後初の年末年始を、国内外の旅行先で過ごす家族が増えるとみている。親族が帰省せず、少人数で過ごす家庭のニーズに対応する」と話す。
 今年はクレジットカードまたはアプリの会員登録をおせち購入の条件に設定した。消費行動が多様化し、事業者間の競争が激化する中、催事情報などを届け、来店頻度と購入額双方の引き上げを狙う。
 (経済部・駒木千尋)  今後の消費動向に危機感  新型コロナウイルス下では、行動制限の反作用による「プチぜいたく」需要が旺盛だった。調査会社の富士経済(東京都)によると、2022年の重詰めおせちの市場規模は761億円で、コロナ前の19年比19.8%増加した。コロナ禍で旅行や外食が制限され、家庭内のイベント需要が高まったことが要因という。
 県内3百貨店でも、22年のおせち販売額は19年比で5~15%ほど伸長した。ただ、ある百貨店の関係者は、今後の消費動向がコロナ前に戻るとみて「需要喚起策を講じなければ厳しくなる」と危機感を抱く。
 コロナ下では、緊急事態宣言などで客足が離れ、落ち込んだ売り上げを補おうと、おせち商戦に参戦した飲食店も目立った。

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