社説(11月8日)サクラエビ秋漁 気を緩めず資源管理を

 国内では駿河湾でしか漁をせず、近年は不漁対策が待ったなしのサクラエビの秋漁が始まった。11月1日の漁獲は最近5年の初日で最も少なく、前年の3割程度の約1トンにとどまり、1ケース(15キロ)当たり前年初日を2割上回る平均約7万9千円で取引された。
 初日の漁獲が低調だったのは、まだ海水温が高いためなどとして2回目の出漁は見合わせている。サクラエビの群れがまとまるのは水温17~18度とされ、初日時点ではまだ20度以上あったという。
 「秋が深まれば漁獲が上向く」と漁業者は期待する。春漁が豊漁で滑り出すなどした「明るい兆し」を関係者とともに信じたい。
 県水産・海洋技術研究所は毎夏、駿河湾内で産卵数調査を実施し、組合に情報提供する。今年は湾の南側で多く取れる可能性があるという。
 観光や外食産業も新型コロナ禍前の活性を取り戻した。サクラエビ産業が地域の基幹産業であり続けるためにも、気を緩めず資源管理に取り組んでほしい。
 1960年代に年間3千~7千トンあったサクラエビの水揚げは2010年に千トンを割り込み、18年の春漁は約300トンと前年春の6割減に。由比漁港(静岡市)と大井川港(焼津市)を拠点とするサクラエビ漁船118隻の全船主でつくる静岡県桜えび漁業組合は秋漁を全面休漁とした。
 以来、組合は出漁日数や投網回数を制限し、漁の前に試験投網して稚エビが多い群れは漁を見送ったり、漁場を制限したりするなどしてきた。
 サクラエビは夏にふ化し、一生は1年数カ月とされる。産卵期の6月11日から9月30日は県が禁漁と定めていて、組合が漁期を決める。今秋漁は12月25日まで。海が荒れる年明けは例年、漁をしない。
 持続可能なサクラエビ漁には、秋漁で「0歳エビ」と呼ばれる稚エビをできるだけ残し、春漁につなぐことが重要になる。
 サクラエビ漁は1894年、富士川河口沖でアジの夜曳[び]き漁中に偶然取れたのを機に始まった。出漁しなくても全員で水揚げ額を配分する「プール制」など、早くから資源管理型漁業に取り組んできた。「駿河湾の宝石」と呼ばれる美しさや、ピンク色のじゅうたんに例えられる天日干しの風景だけでなく、漁にも物語性がある。
 県は先月、旅先の食文化を楽しむ「ガストロノミーツーリズム」の推進組織を設立した。サクラエビが持つ物語性は強力な発信素材になろう。
 水産資源保護や漁業振興だけでなく、流通加工、観光を含め、サクラエビを新たな段階で生かすには、県と静岡、焼津両市が行政の管轄にとらわれず連携する必要がある。

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